札幌での「微妙」な普及状況

こうした「難航」の結果、モバイクが今年8月に日本初のサービスを始めたのは札幌となった。ビジネスコンベンションの「No Maps 2017」が仲立ちとなり、行政や地元企業に働きかけを進めたことで開始が実現したのだ。ローンチイベントは全国メディアで報じられ、東京からわざわざライド体験に来る人も出るほどの盛況だったという。市の担当者は言う。

「札幌市は先進的取り組みをおこなう企業の誘致を進めており、モバイクとの話が進みました。サービス開始後も、特に市民からの苦情はなく、問題が起きたという話も聞いていません」(札幌市経済観光局ITクリエイティブ産業担当課)

とはいえ、現時点でのサービス展開地域は札幌駅から北西に1キロほど離れたJR桑園駅-琴似駅の周辺で、札幌駅前やテレビ塔など市内中心部はエリア外になっている。ポートは地場のコンビニであるセイコーマートやドラッグストアのサツドラの駐輪場を用いる形となっている。

札幌市内のコンビニ内の駐輪場に設置されたモバイクのポート。地域の需要を掘り起こせるか。(写真提供=モバイク・ジャパン)

これでも、借りた店舗に車両を返さなければいけない従来のレンタサイクルよりも利便性は高いだろう。だが、エリア的に観光需要は望めず、かといって地域住民にとっても、出発地と目的地の付近にポート設置店舗がなければ、シェアサイクルの本来の利点である「最後の1キロ」の移動ニーズを満たせない。事実、ある札幌市民はこう話す。

「地域も車両数も現時点では限られていますから、正直なところ、札幌市民の間でモバイクの認知度はまだまだ。進出後のトラブルはほとんど起きていませんが、一方で積極的に使っている人も、あまりいないみたいなんです」

なんとも寂しい状況だ。筆者が取材したところでは、なんとモバイクとの折衝にたずさわった市の職員自身も、アプリはインストールしたもののまだ現物に乗っていないという。エリアが市内の中心部から外れていることもあって、市民の関心はまだまだ低い。

モバイク側は「駐車スペースのエリアは拡大しており、その利便性は常に向上しております」「札幌でご利用いただいている方々からは非常に好意的なコメントをいただいております」と述べる。なんとか、もう少し利用状況が活発になってほしいところだが……。