各社の日本上陸と意外なもたつき
こうした中国のシェアサイクルは、今夏、大手各社が日本上陸を発表している。今年6月にはモバイクが福岡市に日本法人を設立し、市の関係者らと共同記者会見を開催した。8月23日からは札幌市で試験的にサービスを開始している。また8月には同じく大手のofoがソフトバンクC&Sと提携して9月から東京や大阪でサービスを開始すると発表した。
筆者は主に中国でモバイクを使っているが、非常に利便性の高いサービスだと感じる。日本でも同様のサービスがあれば、多くの消費者が歓迎するはずだ。たとえば都心における東京駅・銀座・日本橋周辺、大阪の心斎橋・なんば・天王寺周辺の各駅間の徒歩移動はけっこう面倒くさいが、シェアサイクルで動き回れればかなりラクになるだろう。
……だが、筆者の期待もむなしく、その後の中国シェアサイクル各社の日本市場での動きは鈍い。10月10日現在、モバイクは札幌でのローンチ以降のニュースがほとんど聞こえてこず、ofoも「公約」したはずの9月中のサービス開始が果たせていない。今回の記事では、中国的イノベーションが日本で二の足を踏む現状と、その背景から垣間見える中国シェアサイクル・ビジネスの真の姿について追っていきたい。
ofo「サービス開始の結論はまだ」
「ofoが日本国内で具体的にどのような形で展開するかは、現時点ではお伝えできませんが、10月中にあらためてプレスリリースを出したいと考えています。9月中のサービス開始は難しくなりましたが、10月以降に早期に開始できるよう努力しているところです」
9下旬、筆者の電話取材にそう回答したのは、ofoの日本側パートナーであるソフトバンクC&Sの広報担当者だ。もっともこの担当者は「東京や大阪で行政と調整中ですが、サービスを開始するかの結論はまだ出ていません」とも述べており、開始までのハードルがまだ高いことを感じさせた。
もたつきについて、事情を知る別の日本人関係者はこう言う。
「ソフトバンクの孫正義社長は、ofoに出資する中国IT大手アリババのジャック・マー会長を見出した人物。2人はアリババの創業直後から18年間の付き合いで、極めて信頼関係が強い。ofoの日本進出もこのルートから話がはじまったようだ。日本国内ですでにテストサービスを開始したライバルのモバイクとの競合もあって、ofo側は早期にサービスをはじめたいようなのだが……」
だが、ofoのあせりにもかかわらず、行政側との調整には時間がかかっている。その間、日本のテレビ番組では、中国でシェアサイクルが流行した結果、放置自転車問題が浮上していることがたびたび報じられている。
「放置自転車問題については、日本の弊社側で対策を考えていく方針です」(ソフトバンクC&S)
中国式の「どこでも乗り捨て」は、日本では難しい。日本市場でのofoは他のサービス形式を模索せざるを得ないのだが、具体的な方法が見えづらい状態にある。
なお、ofoは上記取材後の10月16日、日本向けのツイッターアカウント@JapanOfo を開設して専用アプリをリリース。東京や大阪の倉庫内にofo車体の存在がGPSで確認されたこともあり、「ついに日本上陸が決まった」とSNSなどで話題となった。だが、筆者が追加取材をおこなったところ、上記の担当者はこう述べる。
「具体的なサービス内容、実施の都市を含めてまだ調整中です。11月ごろをメドに発表できればと考えているのですが」
まだ、正式なサービス開始までの道のりは遠いようだ。