「日本最高峰」の大学に同郷の人間が少ない
「下3つは、沖縄、大阪、滋賀」。都道府県別の東大合格率を整理したところ、その結果にショックを受けた。私は滋賀県(以下、滋賀)大津市出身の東大生である。中学校からは兵庫の灘校に通った。しかし、というよりは、だからこそ、滋賀への愛は人一倍強いと思う。大河ドラマを見る時には勝つはずのない石田三成を応援し、パ・リーグでは西武の肩を持つ。琵琶湖と比叡山が織りなす景色を楽しめて、かつ交通の便も良い大津は、最も住みやすい街だと信じて疑わなかった。
東大に入学し、なおさら強く滋賀のアイデンティティを持つこととなる。関東には「滋賀って半分琵琶湖でしょ」と真面目にいう人もまれではない。ふざけるなと思う。琵琶湖は滋賀の6分の1を占めるにすぎないことを知っているのは、たいてい身近に滋賀の出身者がいる人だ。滋賀の小学校に行けば必ず習う基礎知識である。ちなみに、滋賀は琵琶湖の面積より森林面積の方が大きい。
東大は日本最高峰と言われる大学である。大学側にもその自負があるようで、例えば医学部のガイダンスでは「トップだからこそ臨床よりは研究を」と繰り返し聞かされた。その、「日本最高峰」の大学に同郷の人間が少ないという事実がショックだったのだ。
奈良、富山、鹿児島、兵庫が強い
まずは上位のランキングを見よう。18歳1000人あたりで、1位東京10.3人、2位奈良5.2人、3位神奈川3.8人、4位富山3.5人、5位鹿児島3.4人、6位兵庫3.3人と続く。この上位6都県のうち、東京から離れた(首都圏以外の)地域にあるのは、奈良・富山・鹿児島・兵庫の4県である。
兵庫・奈良・鹿児島はそれぞれ、灘・甲陽学院、西大和学園・東大寺学園、ラサールといった私立の進学校が大幅に寄与している。特に奈良県は、京大と阪大への進学率で全国トップを独走している。これについては後述する。富山だけは強さの構造が異なるが、ここでは詳述しない。
冒頭にも書いたが、自分にとっては衝撃的な数字だった。全国で0.05%を下回るのは、滋賀・大阪・沖縄の3府県だけである(編注:図表は記事末尾にまとめて掲載)。東大に合格するのは18歳2000人につき1人以下ということになる。わが郷土滋賀は学力が低いのか。
答えは否だ。京大・阪大の進学率を見れば明瞭である。いずれも0.5%の大台を超えている。京都や兵庫に実績のある中高一貫校があるので、東大を目指すのであれば中学や高校の段階からそちらに通うイメージが強い。自分もその一人である。一方で滋賀の進学校の生徒は、京都・大阪の大学を志向するのだ。
滋賀は、京阪神地区との結びつきが強いからこそ、東大進学率では弱く映ってしまう。実際、県内トップの膳所は、東大進学者3人に対して、京大進学者66人を誇る。彦根東も、平成28年度では東大1人に対し、京大10人、阪大18人の実績を誇る。
これは大阪も同様である。大阪の梅田から電車で30分ほど、神戸市の東端に位置するわが母校・灘では、1学年220人中70人余り、つまり3分の1が大阪府在住者であった。下宿を除くと、兵庫県在住者は約100人であり、なんと半数にも満たない。大阪は奈良の私立高校へのアクセスも良い。東大を志向する生徒は高校から県外に行き、そして大阪府内の高校は、京大・阪大を志向しているのだ。