なぜ奈良が上位で、滋賀が下位なのか――。今回、プレジデントオンラインでは2017年のデータをもとに、18歳人口1000人あたりについて難関大学合格者数の都道府県別ランキングを作成した。対象は、東京大学、京都大学、大阪大学の3つ。その結果、「絶対数」ではみえなかった実態が浮かび上がった。この結果について滋賀県出身の現役東大生が分析する。

「日本最高峰」の大学に同郷の人間が少ない

「下3つは、沖縄、大阪、滋賀」。都道府県別の東大合格率を整理したところ、その結果にショックを受けた。私は滋賀県(以下、滋賀)大津市出身の東大生である。中学校からは兵庫の灘校に通った。しかし、というよりは、だからこそ、滋賀への愛は人一倍強いと思う。大河ドラマを見る時には勝つはずのない石田三成を応援し、パ・リーグでは西武の肩を持つ。琵琶湖と比叡山が織りなす景色を楽しめて、かつ交通の便も良い大津は、最も住みやすい街だと信じて疑わなかった。

東大に入学し、なおさら強く滋賀のアイデンティティを持つこととなる。関東には「滋賀って半分琵琶湖でしょ」と真面目にいう人もまれではない。ふざけるなと思う。琵琶湖は滋賀の6分の1を占めるにすぎないことを知っているのは、たいてい身近に滋賀の出身者がいる人だ。滋賀の小学校に行けば必ず習う基礎知識である。ちなみに、滋賀は琵琶湖の面積より森林面積の方が大きい。

東大は日本最高峰と言われる大学である。大学側にもその自負があるようで、例えば医学部のガイダンスでは「トップだからこそ臨床よりは研究を」と繰り返し聞かされた。その、「日本最高峰」の大学に同郷の人間が少ないという事実がショックだったのだ。

奈良、富山、鹿児島、兵庫が強い

まずは上位のランキングを見よう。18歳1000人あたりで、1位東京10.3人、2位奈良5.2人、3位神奈川3.8人、4位富山3.5人、5位鹿児島3.4人、6位兵庫3.3人と続く。この上位6都県のうち、東京から離れた(首都圏以外の)地域にあるのは、奈良・富山・鹿児島・兵庫の4県である。

兵庫・奈良・鹿児島はそれぞれ、灘・甲陽学院、西大和学園・東大寺学園、ラサールといった私立の進学校が大幅に寄与している。特に奈良県は、京大と阪大への進学率で全国トップを独走している。これについては後述する。富山だけは強さの構造が異なるが、ここでは詳述しない。

冒頭にも書いたが、自分にとっては衝撃的な数字だった。全国で0.05%を下回るのは、滋賀・大阪・沖縄の3府県だけである(編注:図表は記事末尾にまとめて掲載)。東大に合格するのは18歳2000人につき1人以下ということになる。わが郷土滋賀は学力が低いのか。

答えは否だ。京大・阪大の進学率を見れば明瞭である。いずれも0.5%の大台を超えている。京都や兵庫に実績のある中高一貫校があるので、東大を目指すのであれば中学や高校の段階からそちらに通うイメージが強い。自分もその一人である。一方で滋賀の進学校の生徒は、京都・大阪の大学を志向するのだ。

滋賀は、京阪神地区との結びつきが強いからこそ、東大進学率では弱く映ってしまう。実際、県内トップの膳所は、東大進学者3人に対して、京大進学者66人を誇る。彦根東も、平成28年度では東大1人に対し、京大10人、阪大18人の実績を誇る。

これは大阪も同様である。大阪の梅田から電車で30分ほど、神戸市の東端に位置するわが母校・灘では、1学年220人中70人余り、つまり3分の1が大阪府在住者であった。下宿を除くと、兵庫県在住者は約100人であり、なんと半数にも満たない。大阪は奈良の私立高校へのアクセスも良い。東大を志向する生徒は高校から県外に行き、そして大阪府内の高校は、京大・阪大を志向しているのだ。