たしかに冷静に考えてみると、株式譲渡を経て大手企業のパートナーになれば、小さな企業を買収したとき以上のシナジー(相乗効果)が見込めます。実際、事業承継を目的として株式を譲渡した会社も、M&Aによって大手と組むことで大きな成長を遂げたところが少なくありません。
つまり、M&Aを成長の起爆剤にできるかどうかは、売るか買うかで決まるわけではない。大切なのは、どこと組むかであり、売る側になるにせよ、買う側になるにせよ、自社に足りないものを補える適切なパートナーと組むことによって企業は成長できる――。
その社長との面談で気づきを得た私は、この仮説に、ビジネスにおける産業構造の変化など、自分なりの分析を加えた結果、「これから中堅・中小企業でも、成長戦略型のM&Aが主流になる」と確信するに至りました。
守りのM&Aから、攻めのM&Aへ
これまで主流だった事業承継型M&Aが守りとすれば、成長戦略型M&Aは攻めのM&Aともいえます。
それ以降、お客様にも成長戦略型M&Aの意義や可能性をご説明して、守りから攻めに転じることを積極的にご提案してきました。それから5年が経過して、実際に成長戦略型M&Aを実行して売上げや利益を飛躍的に伸ばした企業もあらわれ始めています。
5年前の時点では仮説でしたが、事例が積み重なったいまでは事実として断言できます。売るにしろ買うにしろ、成長戦略型M&Aは、中堅・中小やベンチャー企業が勝ち残るための最適解であると。
では、売り手企業が、M&Aによってシナジーを生み、自社の成長にドライブをかけるこ
とに成功した事例とは、どのようなものでしょうか。
実際のケースをご紹介しましょう。