ブランド製品になると生じる2つの機能

ここで1つ質問です。皆さんが普段、売ろうとしているのは製品でしょうか、それともブランドでしょうか?

ここで言う製品とは、広い意味での製品であり、モノだけでなくサービスも、またパッケージやデザインなども含みます。ブランドとは、ある製品を他の製品と区別するための、ネーム、ロゴ、パッケージなどの「記号」のことです。製品が売れるときというのは、モノ自体がいいから売れる(=製品で売れる)こともあれば、ブランドイメージがいいから売れる(=ブランドで売れる)こともあります。この2つは区別して考えることが大切です。

「製品で売る」ということは、名前(スタイル)ではなく、中身(パフォーマンス)で勝負するということです。一方、「ブランドで売る」ということは、パフォーマンスとスタイルの組み合わせで勝負するということです。製品で売るよりも、ブランドで売るほうが、顧客にも企業にもメリットがあります。

パフォーマンスにスタイルが加わること、つまりノーブランド製品からブランド製品になることで、顧客にとって2つの機能が生じます。

人は「不確実性」を避けようとする

1つは、パフォーマンスを予測できるようになることです。例えば、出張でホテルを予約する際、知らない名前のホテルよりも、知っている名前のホテルを選ぶほうが安心しませんか? その理由は、ブランドが付いていることで、品質(パフォーマンス)を予測しやすくなるからです。予測が困難だと、リスクが高まります。これは、人にとって心地よくないことです。

人は予測の困難性、つまり不確実性を避けようとします。ブランドが付いていると、予測が容易になりますから、安心感が得られますし、製品選択の労力も軽減されます。食品を選ぶときも、以前買った食品がおいしかったら、また同じブランドの食品を選ぶことで、期待通りの味が得られます。中身を知るための手がかりとなることは、ブランドの最も基本的な機能です。

ブランドにはもう1つ機能があります。人には、自分らしさを確認したり、他者に表現したいという欲求があります。ブランドは、そのための小道具になるのです。ただし、この場合は、そのブランドがある程度有名になり、世の中にイメージが共有されている必要があります。