大型バスぐらいのゴミが飛んでいる

【田原】13年に宇宙ゴミを除去するアストロスケールを立ち上げます。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【岡田】12年に39歳になり、ミッドクライシス(中年の危機)といいますか、40代に何をすればいいのかと悩みました。そのとき思い出したのが、15歳のころ抱いていた宇宙への関心です。とりあえず欧米や日本で開かれていた宇宙関連の学会に参加したところ、どの学会でも宇宙ゴミの問題が長く議論されていました。

【田原】学会で議論されているということは、宇宙ゴミについてみんな危機感はあるわけですか。

【岡田】はい。ただ、学会には世界中の宇宙ゴミの専門家が集まっているのに、みなさんリサーチやシミュレーションしか発表しない。IT業界ではソリューションを提案しないとプレゼンとして認めてもらえないのに、学会では誰もソリューションを出していなかった。その様子を見て、ならば自分が取り組もうと。

【田原】そもそも宇宙ゴミはどうして問題なんですか。

【岡田】09年にアメリカとロシアの衛星が衝突しました。それまで宇宙業界は広い宇宙で衛星同士がぶつかることを信じていませんでしたが、実際に事故が起きた。では、衝突でできた破片はどうなるのか。宇宙ゴミとして秒速7~8キロ、ものによっては弾丸の約40倍の速さで地球のまわりをグルグル飛んでいます。衛星にぶつかると爆発させるくらいの力です。その結果、連鎖衝突が起きて宇宙ゴミがどんどん増えて、宇宙の持続的な利用が危ぶまれています。

【田原】いま数はどのぐらいですか?

【岡田】1センチ以上のものが75万個、10センチ以上は2万3000個といわれています。なかにはもっと大きなサイズもあって、大型バスみたいな宇宙ゴミはいま20個くらい飛んでいます。

【田原】岡田さんがやるまで、宇宙ゴミの除去事業をやっている会社はなかったんですよね。

【岡田】ないです。いまも私たち1社だけ。やろうとしたときも、みんなに反対されました。