会社が変われば常識も変わるーー。約30社を担当する産業医の大室正志氏と、ミクシィ前社長で投資家の朝倉祐介氏は、「『丸の内』の大企業と『渋谷』のベンチャーの企業文化が、大きく隔たっているのはもったいない」と言う。丸の内側がスーツの相手に安心感を抱くのに対して、渋谷側もみな同じようなカジュアルファッションに身を包んでいる。なぜお互いは歩み寄れないのか。

※第1回 http://president.jp/articles/-/22953

【大室】「丸の内」の大企業と「渋谷」のベンチャーでは、働き方も企業文化もあまりに違います。ふたつが交錯することは難しいのか、30代のわれわれ2人で考える中で、前回は「スカイプを使いこなせない会社は、働き方改革ができない」という話で終わっていました。これはあながち冗談ではなくて、会社で無駄なことはすごく多い。産業医として訪れた会社で、「働き方改革に関して、他社の事例を教えてくれませんか?」と言われることがよくあります。そこの会議を見せてもらうと、資料が全部プリントアウトされて、ペットボトルのお茶にカップがかぶせて全席に置いてある。「ちゃんとしてるなぁ」と思う一方で、外資系やベンチャーではこうした部分はもっと「雑」だったとも思う。社内会議のための資料は、何かを決めるための手段ですよね。いつもきれいな資料が必要なわけではない。

大室正志氏(左)×朝倉祐介氏

そしてなぜか、資料がしっかり作られ、お~いお茶がちゃんと並べてある会社のほうが、会議で何も決まらないことが多いんですよ(笑)。資料作成や会議運営がなされたことを「成果」とするなら仕事をしたと言えるかもしれないけど、何かを判断し決めることが「成果」だとすると実は何もしていないのと同じになってしまう。

【朝倉】アジェンダが不明瞭なミーティングに出席して、「今回のアジェンダってなんでしたっけ?」と聞くと、「失礼な人」扱いされることもありますからね。

時間あたりの生産性を考えるチャンス

【大室】長時間労働の是正に関して僕もよく相談を受けますが、人間が集中できる時間は1日あたりでだいたい決まっていると言われています。会社に15時間もいるような人は、絶対どこかで休んでるはずなんですよ。見た目はそう見えなくても、脳内がスクリーンセーバーというか。会議中、何も聞いてないのに聞いているように振る舞うのがうまい人って、いるじゃないですか。だから今言われている「働き方改革」は、何が必要で何が必要じゃないかの棚卸しをするために、時間あたりの生産性を考えるという意味では非常にチャンスだと思う。

【朝倉】ミクシィ時代、とある銀行の支店長の方に「会いたい」と言われてお会いしたら、1時間ずっと「やっぱりIT系の方は、銀行はお嫌いですか?証券会社のほうがいいんですか?」と延々と聞かれ続けた経験があります。その話自体は別にいいんですが、「1時間も必要なの?」とは思ってしまう。支店長クラスだとずいぶんお忙しいと思うし、その方の時間もかなり貴重ですよね。