【大室】朝倉さんのようにITやスタートアップといわれる新しい業界にいると、大企業の偉い方たちから「とりあえず若いやつに会っておくか」という感覚で会合をセッティングされることも多そうですね。そういう「枠」要員というか。
【朝倉】ああ、そういう枠なのかもしれませんね。そこで何かを決めようということではなく。
【大室】そういう「とにかく一回会って話してみよう」みたいな慣習って、ベンチャーにはほとんどないですよね。そもそも前回も話したように、お堅い会社だとメール送信時にはアドレスを偉い人順にしないといけないところもいまだにある。そこでは「序列」が絶対で、それを間違えることは社会人というか「会社人失格!」という勢いなんだけれど、一方のベンチャーはとにかくTime is money。それこそ、ほとんどのことはメールではなくてメッセンジャーやチャットツールで済ませる会社もある。「時間を奪うことが最も失礼」というカルチャーですよね。どちらが正しいということではなく、いずれにせよお互いがお互いの常識の中で生きている。完全に生態系が違っていて、これはもう少し混ざったほうが、お互いに学ぶところがあるんじゃないでしょうか。
【朝倉】でもそういう意味では、ちょっとは良くなってると思います。ずいぶんと昔を思い返すと、メールの書き出しが「若葉青葉の候、皆さまにおかれましては……」といった時候の挨拶で始まっている人もいたじゃないですか。
シリコンバレー的「行き過ぎた合理」に驚かされることも
【大室】確かに。それと一応言っておくと、「心情シリコンバレー型」の人たちにも、それはそれで「行き過ぎた合理」を感じることもあります。以前ある人が、僕を含む3人のグループチャットを作って「◯◯さんを紹介します! 大室さんの記事が好きみたいです!」と連絡してきたことがありました。経緯がわからないので、何か説明があるのかと思っていたら、その5分後には「じゃあ、紹介したので!」とその知人はチャットから退出したんです。相手の方は「雑な紹介をされて私も困惑しています」と言いながら、経緯を説明してくれました。どうやらその方が、僕の書いた記事にフェイスブックで好意的なコメントをつけていたので、それを見た知人が「大室さんを紹介しますよ!」という話になったようなのです。こういう場面ではある意味被害者同士で妙な連帯意識が生まれますから、紹介はうまくいき、結果オーライとも言えるんですが……。
【朝倉】スタートアップの世界の人間でも、そこまで雑な人はなかなかいないですよ(笑)。