ユニクロは以前、ナイキやアディダスといった有名スポーツブランドを販売していましたが、その取り扱いをやめ、自社ブランドでスポーツウエアに参入することにしました。ブランド拡張は、有名スポーツブランドを求める客が店舗を訪れなくなることで、ブランドがもともと持っていたカジュアルウエアの価値も失ってしまう可能性があります。このとき、ユニクロは事前に日本オリンピック協会(JOC)のスポンサーになり、あらかじめスポーツの属性をユニクロに付与したうえでスポーツウエアに参入しました。そうすることで、ブランド拡張時のリスクを軽減できます。つまり、JOCのスポンサーは、命綱の役割を果たしたわけです。実際にユニクロは、その後JOCのスポンサーから撤退しました。

楽天がFCバルセロナとパートナー契約を結んだのも、まさに同じ効果をねらってのことだと思います。FCバルセロナのパートナーとして、ヨーロッパでの知名度を上げたうえで、ヨーロッパのネット通販市場に参入すれば、ブランド拡張時のリスクを軽減できます。命綱づくりは、本業でやると、まさに「命がけの跳躍」になってしまいます。そこで、こうしたスポーツ支援などの社会貢献が生きてくるのです。

2つ目の長期効果として「将来の顧客づくり」が挙げられます。エーザイは途上国に、同社のロゴマークが入った価格ゼロの薬を提供していますが、これは将来の顧客づくりを目的とした活動です。また、各企業のキッザニアのパビリオンへのスポンサー参加も、将来の顧客づくりのための活動と考えられます。

3つ目の長期効果は「インターナルマーケティング」です。海外の調査ですが、CRMを実施している企業のほうが、実施していない企業よりも、従業員が企業にプライドやロイヤルティーを持っている割合が高くなっています。また、CRMに関わっている従業員のほうが、関わっていない従業員よりも、自社の価値観に誇りを持っている割合や、自社に強いロイヤルティーを感じている割合が高くなります。

社会貢献とマーケティングがリンクしたCRMは、景気動向や企業規模に関わりなく社会貢献を行える活動としても注目されます。

(構成=増田忠英 写真=時事通信フォト)
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