全員が脱落して研究は中止に

さて2年後の結果ですが、カロリー制限をしたグループは143人中、28人が脱落。5人に1人が続けられませんでした。

さらにショッキングなのは、カロリー制限をしたグループには、骨密度が5%以上低下した人、治療困難な貧血症になった人が7人もいたことです。カロリー制限が低栄養をまねくことは、この研究で明らかになりました。

ちなみに、私どもの北里研究所病院の肝臓グループが脂肪肝の人を対象にして同様の研究を日本で実施しましたが、カロリー制限のグループの全員が脱落して研究は中止。

あらためてカロリー制限が大変なのだということ、そして現実的なダイエットではないことを痛感しました。

リバウンドのたびに筋肉が落ちてしまう

ですから私は自信をもって「カロリー制限はやめましょう」というのです。続けられないことをしても仕方がありませんし、むしろ怖いのはリバウンドです。

人がカロリー制限をして体重を減らす時には、筋肉が減ります。そして逆に、体重が増える時には、脂肪が増えます。

このような現象はウェイトサイクリングと呼ばれます。つまり、ダイエットをして痩せ、続けられずにリバウンドをするたびに、単に体重が増減するのではなく、脂肪が増えて筋肉が落ちていくのです。

これらの点からダイエットのリバウンドは避けるべきで、だからこそ続けられないカロリー制限はおすすめできないのです。

次回は、カロリー制限を気にせずに満腹まで食べてよいことを、さらにエビデンスを交えながら解説します。

*1 Diabetes Care 1994, 17, 519-522
*2 Circulation 2011, 123, 2292-2333
*3 JAMA 2015, 313, 2421-2422

山田悟(やまだ・さとる)北里研究所病院 糖尿病センター長
1970年生まれ。94年慶応義塾大学医学部卒業。2013年(一社)食・楽・健康協会を設立。ロカボ=ゆるやかな糖質制限を提唱し、企業に対して啓発活動を行うなど、日本人の健康増進のために日夜活動中。著書に『糖質制限の真実』『カロリー制限の大罪』(いずれも幻冬舎新書)などがある。
【関連記事】
"白米中心の和食"がヘルシーではない理由
ゆる~い糖質制限「ロカボダイエット」とは?
「糖質オフビール」「ダイエット飲料」に潜む落とし穴とは?
「ロカボ=緩やかな糖質制限」は万病に効く
正月太りをいますぐ「ヘルシーに解消する」3つの方法