「このハゲーー!!」豊田議員の怒りの発火点も「被害者意識」

社会に目を向けても、自分たちの払っている年金保険料が高齢者に奪われているように感じて怒りを覚える若者と、長年真面目に働き年金保険料を納めてきたのに、その割には受け取る年金額が少ないと不満を募らせる高齢者の間に同様の関係があるように見える。

このように自分こそ被害者だとお互いに思い込んでいるのが、日本の現状だ。被害者意識が強くなると、“加害者”とみなす相手に対して怒りを覚え、罰を与えたいと願うようになる。そのため、どうしても攻撃的になる。

▼「自分は被害者。“加害者”である秘書に罰を与えるのは当然」

たとえば、秘書に対する暴言と暴行が週刊誌で報じられ、自民党を離党した豊田真由子衆院議員。豊田氏が「この、ハゲ~っ!」などと暴言を吐いたのは、支援者などのバースデーカード47人分の宛先を間違えた送付ミスに対する怒りのせいらしいが、この怒りの根底には強い被害者意識が潜んでいた可能性が高い。

「送付ミスのせいで、支持者に謝罪しなければならなくなったのだから、自分こそ被害者」という思い込みが、豊田氏の暴走の一因のように見える。こうした被害者意識を抱くことが妥当か否かはさておき、少なくとも豊田氏本人は、「自分は被害者なのだから、“加害者”である秘書に罰を与えるのは当然」と考えたのではないか。

同時に、豊田氏の胸中には恐れもあったと考えられる。送付ミスが支持者を怒らせたら、次の選挙で投票してもらえず、落選するのではないかという恐れである。

エリートであるだけに、自分自身が手に入れた肩書や特権への執着も、それを失うことへの恐れも人一倍強いはずだ。この恐れが豊田氏の怒りに拍車をかけたことは想像に難くない。

このように怒りが恐れから生まれることは、豊田氏に限らず誰にでもある。