うつ・メンタル不調の原因は、脳の「扁桃体」にあることがわかってきた。扁桃体は身体感覚に影響される。胸がドキドキすると相手を「好きだ」と感じることがあるように、頭痛や肩こり、胃痛などが「不安や恐怖」などのストレス感情を引き起こしてしまう。うつ・メンタル不調のメカニズムを、専門家が解説する。

なぜ、うつ・メンタル不調の再発が止まらないのか

うつ・メンタル不調の原因は扁桃体(へんとうたい)にあることが分かってきました。扁桃体は脳の奥深くにあり、情動反応の発生装置ともいわれ、ここで好き嫌いなどが判断されています。先行研究と弊社顧問・筑波大学名誉教授、宗像恒次博士の研究で明らかにされています。

これまで、うつ・メンタル不調は原因と対策がよくわからない「あやふやな“心”が作り出す病気」ととらえられてきました。しかし、脳科学や遺伝学などの発達で、発症のメカニズムが解明されつつあります。この連載では、働き盛りのビジネスマンには無関係とは言えない、最新のうつ・メンタル不調の対策について解説していきます。

2016年6月18日と19日に、NHKは2夜連続でNHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」を放送しました。キラーストレスとは、ヒトの体の中でストレス反応の暴走を引き起こし、人を死にも追い込むストレスのこと。この番組では「ストレスを感じると最初に反応するのは、脳内の扁桃体です」と解説しています。また、番組内で熊野宏昭・早稲田大学教授は「うつは扁桃体で作られる」と発言していました。

現在、多くの企業ではうつ・メンタル不調の対策が急務になっています。罹患する人が相次いでいるからです。そこでの大きな問題は、人数の増え方よりも、「再発を止められない」ということです。うつ・メンタル不調の人は、何度も再発を繰り返してしまう。これが最大の問題です。

なぜ再発が止まらないのでしょうか。

私の推測ですが、多くの企業ではうつ・メンタル不調の原因である「扁桃体の興奮を止める対策」をとっていないためではないかと思います。弊社顧問であり、日本のストレス科学の草分けである筑波大学名誉教授・宗像恒次博士は、脳神経学、遺伝学などをベースに扁桃体を安定化させる研究を1990年代から進め、その集大成として独自の心理療法を開発しました。

弊社ではこの独自の心理療法を今日まで20年以上学んで実践し、多くの企業に提供してきました。例えば、某上場企業では初回うつ休職者の再発率が3年半0%という結果に貢献したこともあり(この企業の産業医が論文発表しています)、うつ・メンタル不調において扁桃体を安定化させる重要性をますます実感しています。