グーグルがスマホのように自動運転でも世界を牛耳るのか?

自動車メーカーが、自動ブレーキや自動車線変更など、高度な運転支援システムの技術開発を徐々に積み上げることで、2030年頃に完全自動運転の実用化を“夢見ている”一方で、IT業界を中心にそれより10年早い2020年頃に完全自動運転による有料サービスを開始しようとしている動きがある。

その筆頭が、Google(グーグル)だ。2000年代に米国防相系の先進研究機関が実施した無人車レースで上位の成績を収めたMIT(マサチューセッツ工科大学)、カーネギーメロン大学、そしてスタンフォード大学などのロボット研究者を雇い入れ、自動運転の開発チームに巨額の資金を投じてきた。そして2016年後半、完全自動運転の事業会社としてWaymo(ウェイモ)を分離し、現在カリフォルニア州やテキサス州の公道で試験走行を続けている。

この他、フランスのNavyaやイージーマイル、アメリカのローカルモータース、そして日本のDeNAやソフトバンクの子会社のSBドライブなど、完全自動運転をバスやタクシーのように活用するビジネスの創出を狙っている。

自動車メーカーはオーナーカー(自家用所有車)を、一方のベンチャー企業はサービスカー(公共機関に近い商用車)という、自動運転に対するアプローチの方法が大きく違う。

こうした二極化した動きが同時進行している。

米インテル社がカリフォルニア州サンノゼ市内で自動運転実験車両を走らせる様子(筆者撮影)

自動運転車で事故が起こったら、誰の責任なのか?

「自動運転車が事故を起こしたら、それは誰の責任になるのか?」

この命題について、いまだに結論は出ていない。

答えが出ないのは、「自動車の運転は運転者が責任を持つ」という根本的な部分において、「ジュネーブ条約」と「ウイーン条約」という2つの国際条約の考え方が異なるからだ。

ジュネーブ条約では「自動運転システム搭載車でも、運転の責任は運転者にある」としているのに対し、ウイーン条約では一定条件下ではあるが、自動運転システムに運転の責任を任せていいと考えるに至っている。

ジュネーブ条約は1952年発効で、日本、アメリカなど多くの国が批准している(ジュネーブ条約加盟国では、日本で発行した国外運転免許証が有効。参考: http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/menkyo/menkyo/kokugai/kokugai04.html )。一方、ウィーン条約は1977年発効で、ドイツなど主に欧州各国が批准しており、日本やアメリカなどは批准していない。

本稿では両条約の詳細については割愛するが、現時点では両条約による“ねじれ現象”が起こっている。日本、アメリカなど加盟国が多いジュネーブ条約は改正に至っていないが、一方で欧州各国が中心のウィーン条約は2014年3月に改正が採択され、2016年3月に発効した。それを受ける形でドイツ国内の道路交通法が2017年6月に改正された。さらにそれを受けて、アウディが今年7月、運転の主体が人間ではなく“車側のシステムに属する”自動運転レベル3の機能を装備した最上級モデル新型A8の量産化を発表した。

こうした状況下でも、いまだに“システム”の責任と、“運転者”の責任のあり方について、世界各国での共通理解は得られていない。それでもドイツは、法改正で自動運転の実用化を後押しすることで、事実上の標準化であるデファクトスタンダードを狙い、自動車業界のイニシアチブを握ろうとしている。

今後、日本は、法律をどのように整えていくべきだろうか。日本と同じくウィーン条約に加盟していないアメリカと歩調を合わせるのか、それとも前述のハノーバー宣言を重視してドイツと歩調を合わせるのか、はたまた独自路線を行きながら米独との接点を見いだすのか――日本としては、重大な判断の時期が迫っている。