朝日社説のロシアへの批判は分かりやすいが、中国への指摘は何を言いたいのかよく分からない。朝日には、中国に対して明確な批判ができない事情でもあるのだろうか。
「自国優先主義」が国際社会を硬直化
後半で朝日社説は北朝鮮に対し、こう主張している。
「北朝鮮はかつて、中国と旧ソ連の間を行き来する『振り子外交』を繰り返した。大国の力を利用して打開策を探りつつ、結局は自主路線を強め、現在のいびつな体制を作り上げた」
「北朝鮮が本当に危機感を抱くのは、日米韓に中ロが加わり、行動をともにする時である。核とICBMは国際社会全体を脅かす以上、中ロも安保理の新たな決議に同調すべきだ」
中国とロシアを含めた国際社会が、1つになって北朝鮮にものを言う。なるほどとは思うが、現実はそう動かない。各国とも外交では自国の利益を最優先するからである。
対北での朝日と読売の微妙な違い
読売新聞の社説も「国際社会による圧力強化に向けて中国とロシアは責任を果たさねばならない」と中国とロシアに注文を付けるものの、「圧力強化」という言葉を使う。
具体的には後半で「問題なのは、中露が依然、制裁強化に抵抗していることだ」と指摘し、「ロシアは、発射されたのは中距離弾道ミサイルで、ICBMではないと強弁する。中国は、北朝鮮の体制の不安定化を懸念し、原油の供給制限などには消極的だ」と書く。
さらに「数々の決議に違反する北朝鮮の弾道ミサイル発射を放置することは、安保理の権威を貶(おとし)める。中露は、実効性のある新たな決議を受け入れるべきだ」との主張を展開する。
通常、朝日のスタンスは理想主義で、読売は現実路線をとる。今回の異常な北朝鮮の暴走には、朝日も読売も厳しい批判を加えている。
ただし、そこには微妙な違いがある。読売社説が「圧力強化」「制裁強化」という明確な言葉を使っているのに対し、朝日社説は「統計上は近年、輸出がないとされる石油を、実際にはどの程度供給しているのかも明らかにすべきだろう」という分かりにくい表現を使っている。やはり朝日には、なにか事情があるのだろう。
「発射地点と時刻も異例だった」
次に毎日新聞の社説。見出しは「看過できない技術の進展」だ。どんな技術が看過できないのかと読み進めていくと、たとえばこう次々に指摘していく。
「発射地点と時刻も異例だった」
「今回は軍需工場の多い北部慈江道(チャガンド)から初めて発射した。最近は発射地点を次々と変える傾向がある」
「『衛星打ち上げ』を名目にしてきた以前の長距離ミサイルは特定の大型施設からしか発射できなかった。だが、移動式の長距離ミサイルを深夜に短時間の準備で発射できれば米国の意表を突くことができる」
「いつでも、どこからでも、より遠くに届くミサイルを発射できるようになった可能性がある。北朝鮮のミサイル技術の着実な進展は看過できないレベルに至っている」
なるほど。「いつでも、どこからでも、より遠くに届くミサイル」だからこそ、もう見過ごせないのはよく分かる。しかしながら社説としての主張は読み取れない。朝日や読売は「国連安保理の決議を受け入れろ」と中国とロシアに注文をつけていたが、この毎日社説は事実の解説にとどまっており、残念である。