次は日本列島をまたいで太平洋か

一般的にICBMの場合、「大気圏再突入」と「核弾頭小型化」が、技術的に難しいといわれる。

大気圏への再突入時に7000度にも達する高熱や激しい振動から弾頭を守る必要があるからだ。再突入時に入射の角度が浅ければ、大気圏にはね返される事態も起きる。

北朝鮮側は「過酷な大気圏再突入でも弾頭の誘導、姿勢制御が正確に行われた。高温条件でも構造的安定性が維持された」と主張している。しかし北の発言をどこまで信頼できるか。「大気圏再突入の技術は完成していない」と推測する専門家もいる。

北朝鮮は高角度のロフテッド軌道発射を繰り返している。通常の斜めの角度による発射に比べて再突入技術を検証しにくい難点がある。

軍事専門家は「大気圏への再突入の技術を完璧なものにするため、新たなICBMを、日本列島の上空をまたぐような軌道で、太平洋に発射する可能性がある」と指摘する。

この専門家によれば、ICBMに搭載される核弾頭の小型化も進められ、近く核実験を行うだろうという。

日米は朝鮮半島沖で戦闘訓練

岸田文雄外相兼防衛相は7月30日、「航空自衛隊のF2戦闘機が30日午前中に九州西方から朝鮮半島沖の空域で、米空軍B1戦略爆撃機と共同訓練を実施した」と発表した。

挑発行動を続ける北朝鮮への牽制であり、28日深夜のICBMの発射から2日後の早さだった。

岸田氏は訓練の目的について「日米共同対処能力および部隊の戦術技量の向上を図るために訓練を実施した」と述べた。

この発言に加え、「特定の国や地域を念頭に置いて実施したものではない」と説明したうえで「北朝鮮の動向については重大な関心を持ち、情報の収集に万全を期したい」と語った。

北朝鮮と同じ土俵で勝負するな

北の脅威に素早く対応するのはいいだろうが、脅しに対し、脅しで対応するのはいかがなものか。「目には目を、歯には歯を」という有名な言葉もある。だが北朝鮮と同じ土俵で勝負していたのではいつまでたっても勝負は終わらない。終わらないどころか、核戦争まで起きかねない。そうしないためにはどうすべきなのか。

この沙鴎一歩にも正しい方法は分からない。しかし国際社会が己の利害を抜きにして真剣に行動する必要があることだけは確かだ。朝日や読売の社説が主張するように、現時点では中国とロシアに最大限の努力を尽くし、責任を果たしてもらうしかない。

(写真=AFP=時事)
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