レモンサワーのブームで、割り材の元祖「ハイサワー」にも追い風が吹いている。「わ・る・な・らハイサワー」の博水社は、社員20人の中小企業だが、商品づくりには徹底的にこだわっている。37年目を迎えるロングラン商品の秘密とは――。

レモンサワーブームで業績好調

「レモンサワー」がブームになっている。レモンサワーとは、焼酎などの蒸留酒にレモン果汁とソーダを加えたアルコール飲料。さっぱりとした飲み口で、夏場にはうってつけだ。各社が新商品を競い合って開発しているが、「元祖」といえば、発売から今年で37年目を迎えるという博水社のお酒を割る炭酸飲料「ハイサワーレモン」ではないだろうか。かつて放送されていた「わ・る・な・らハイサワー」「お客さん、終点だよ!」というテレビCMに馴染みのある人も多いだろう。

田中秀子・博水社社長

レモンサワーのブームを追い風にして、業務用のハイサワーレモンの売れ行きも急増している。出荷数は3年連続で増加し、2016年は前年比7%増の約229万本、特に2016年後半10~12月では前年同期比の約25%増となった。

また、これまでは関東圏が中心だったが、名古屋、大阪、京都など関東以外にも販売網を拡大している。2016年10月からは居酒屋チェーン「塚田農場」の全国140店で、ハイサワーレモンをジンで割る「極レモンサワー」をオリジナルメニューとして提供。全店で1日4000杯が飲まれる人気商品となっている。

ハイサワーレモンの特徴は、上質のレモン果汁だ。通常は、皮ごとレモンを押しつぶして搾汁するが、博水社では、イタリア・シチリア島の契約農家で手摘みされたレモンを輪切りにして、果肉の中心部30%だけを搾るというぜいたくな「真ん中搾り」を採用している。そうすることで、皮のしぶみなど雑味や農薬が入らないという。

このハイサワーレモンを開発したのは、現社長の田中秀子(56歳)の父で、博水社2代目社長の田中専一だ。1981年の発売当初から、基本的にレシピは変えていない。レモン果汁に炭酸水、天然オイルを複数調合した秘伝のレモンフレーバーを加え、隠し味に微量の白ワインが入っている。甲類の焼酎や麦・米焼酎で割るとよく合うが、芋焼酎には合わない。

意外なことに、商品名は専一がこだわり抜いて開発したため、商品名を付けるに当たって、「俺サワー」「我サワー」「田中サワー」など珍案も出たが、専一はふと『吾輩は猫である』を思い出し、「我輩が作ったサワー」ということで「輩サワー」と命名、商標登録も「輩サワー」で取得した。ハイサワーが商標登録されて、他社は使えなくなったので、一説には「ハイ」と「サワー」に分かれて、○○ハイが関西、○○サワーが関東で広がったと言われている。