そこでは、先にあげた「あま絵」、「ツイッター」、『あさイチ』の「朝ドラ受け」が多大な役割をはたした。『あまちゃん』の内容の濃さや豊富さと、震災以降、ユーザーが激増したツイッターがうまく連動し、多くの視聴者が意見や感想、ツッコミや「あま絵」をツイッターにアップしたことで、視聴熱が上がった。

宮藤さんは「朝ドラを楽しんでいた」

『あまちゃん』をとりあげる雑誌も多く、なかでも、女性誌『CREA』(文藝春秋)が2014年1・2月合併号で映画とドラマ特集を行ってそこで『あまちゃん』を多く取り上げ、表紙はその出演者の松田龍平だったことは、画期的だった。いわゆる女性週刊誌で記事になることは多い朝ドラだが、ファッション誌やカルチャー誌で扱われることは滅多になかったからだ。筆者も、登場人物の名台詞の選出や、プロデューサーの訓覇圭のインタビューを任された。当時『CREA』のデスクだった竹田直弘は『あまちゃん』特集を行った経緯をこう語る。

「『CREA』も『あまちゃん』以前は朝ドラに積極的ではなかったと思いますよ。朝ドラはカルチャー女子が観るものではない、という感じでしたし。でも、宮藤官九郎さんが脚本ということで『CREA』読者も最初からくいついてましたね。本当は、僕は一冊丸ごとドラマ企画をやりたかったんですけど、周囲から『前例がないから不安』といわれ、仕方なく『映画&ドラマ特集』にしたんです。ほんとはドラマ特集、というか『あまちゃん特集』にしたかったですね」

また、同誌に掲載された『あまちゃん』プロデューサー・訓覇圭のインタビューによれば、<宮藤さんが『朝ドラをぶち壊す』とか『朝ドラを刷新する』というほうが刺激的でしょうけれど、実は宮藤さんは、『朝ドラを楽しんでいた』だけだと思うのです。朝ドラらしさって一言でいうと、朝、みんなが少しでも明るい気持ちになるもの(後略)>だという。宮藤は、朝ドラの制約も楽しんで、脚本に組み込んでいった。それが、視聴者にも伝播してヒットにつながったのだろう。

「朝ドラは生活のマストアイテム。」

グルメやファッションの情報誌『Hanako』(マガジンハウス)が朝ドラ特集を組んだのは、第94作『とと姉ちゃん』(脚本:西田征史)に合わせた2016年4月28日号だった。「朝時間の楽しみ。」という特集の中の4ページで、2013年以降の朝ドラに関して紹介している。筆者もここで「朝ドラは生活のマストアイテム。」というエッセイを書いた。映像関係の専門誌や、作品の公式ライターとしてプレスやパンフレットに、現場取材をもとに作り手や俳優に関する記事を書く仕事が主だった筆者に、おしゃれな女性誌から依頼が来ること自体珍しかったこともあり、強く印象に残っている。

それこそ、家族が出かけてから、専業主婦が家事をしながら時計代わりに朝ドラを観て、主人公の生き様を毎日の生活の張りにしていた草創期から、いまや、その感想をみんなで分かち合う時代となった。「お茶の間」という言葉が死語になり、家族でテレビを観る時代でもなくなり、テレビは自室でひとりで観るものになっていたところへ、「(ひとりなのに)ひとりではなく、(みんなではないけど)みんなで観る」という新しいかたちが生まれた。つまり、家族で観ていた朝ドラは、ツイッターなどのSNSを介して“志”を同じくする多くの人たちと楽しむ朝ドラに変わった。これこそが新生朝ドラの実像だろう。

木俣 冬(きまた・ふゆ)
フリーライター。東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。おもな著書に『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『SPEC全記録集』(KADOKAWA)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)などがある。