最近、新聞やテレビで「IoT」の言葉を目にしない日はない。だが「モノ」の「インターネット化」といわれても抽象的でわかりにくい。そこで「IoT」の第一人者にイチから解説してもらった。

IoTは「Internet of Things(モノのインターネット化)」の略語です。ここでいう「モノ」とは、この世界に存在するありとあらゆるモノを指します。たとえばテレビや冷蔵庫などの電化製品や、普段から身につけている腕時計やスマートフォン、デジタルではない洋服や靴、そして私たち自身の肉体などもモノの1つ。さらに踏み込むと、IoTでは私たちの様々な経験(コト)もモノに類するものとして考えます。

一方、「インターネット化」とは、モノやコトがインターネットにつながって情報がやり取りされることを指します。インターネットでやり取りするためには、情報をデジタル化する必要があります。リアルなモノやコトについている情報はアナログなので、IoTとは、「これまでアナログだったモノやコトの情報を、デジタルで表現してやり取りすること」といっていいでしょう。

実は、モノをつなげて情報をやり取りするというコンセプトは以前からありました。たとえば、モノに無線タグをつけて情報をやり取りする「RFID(=radio frequency identifier)」、ネットワークでつながれた機械同士がやり取りする「M2M」といった技術がそうです。

IoTはこれらの概念や技術の焼き直しにすぎないのではないかと疑う人もいるようです。たしかにIoTは従来の概念や技術の延長線上にあることは間違いありません。しかし、これまでと違って画期的な点が2つあります。

1つは、自律的に制御されている点です。これまで人類は技術革新で3度にわたる産業革命を経験しました。蒸気機関の発明で動力を獲得した第1次産業革命、電力・モーターの発明で動力が革新された第2次産業革命、そしてコンピュータの発明による第3次産業革命です。コンピュータの登場で、自動化は大きく前進しました。ただ、コンピュータを活用するには、人間が情報を入力したり分析したりする必要があります。

一方、今起きつつある第4次産業革命は、人による制御を必要としません。IoTでユーザーが意識しないうちにモノやコトから情報が吸い上げられ、AI(人工知能)で分析されて、再びモノに伝えられてロボットやスマホが自動で作業をやってくれます。IoTは、単に情報をやり取りするだけでなく、物事を自律的に制御するシステムの一部として機能しているのです。