30年度には消費税1.3%増税に相当

確かに、11年3月の東日本大震災に端を発して国内の電力事情は原子力発電所がすべて止まるという未曾有の状況に陥り、脚光を浴びた再エネ。再エネ普及のために高めの買い取り価格が設定されただけでなく、その価格で買い取ることが10~20年間も保証されている。日本では、太陽光発電の買い取り価格が諸外国に比べて2倍以上高くなり、その結果、チャンスととらえた企業や投資家によって「太陽光バブル」が起きている。

長期のエネルギーミックスを決める際に重要なのは、「費用と導入量のバランス」を取ることだったと朝野氏は指摘する。導入に要する費用をどこまで許容するかだ。

「FITはすでに開始から5年が経過し、買取価格も切り下げられているが、いまだに再エネ発電事業者の発電コストは諸外国の2倍程度に高止まりしたまま。補助から自立するには大幅なコストダウンが必要。われわれの試算では2030年度の買い取り費用の累積総額は59兆円に上り、そのうちの44兆円を国民が賦課金として支払うことになる。20年間等の買取期間すべてを考慮すると2050年度には買い取り費用の累積総額が94兆円、累積賦課金は69兆円になる。私たちはこの負担を覚悟しなければいけないということになる」(朝野氏)

30年度単年の賦課金総額が最大3兆6000億円(電中研試算)となった場合、実質的には消費税が約1.3%上がるのと同じだと朝野氏は指摘する。電気は生活必需品であることから、賦課金の上昇は低所得者層への負担がより大きく、逆進性が高い。また国際競争にさらされている産業界、特に中小企業への打撃も計り知れない。


電気ご使用量のお知らせ(検針票)の「再生可能エネルギー発電促進賦課金」

そこで、今年4月から施行された「改正FIT法」によって、2000kW以上の太陽光発電については入札制度が設けられた。さらに、認定は受けていても、実際には発電を行っておらず電力会社との接続契約が遅れている事業者に対しては、認定そのものを取り消すといったペナルティも課せられることになる。だが、入札制度にしても、2000kW未満の設備は対象となっておらず、発電コストを押し下げ、賦課金の抑制につながるのか不透明だ。

朝野氏は「改正を踏まえて、この4月末にバイオマスや風力発電を含む再エネ合計で7500万キロワットの接続契約がなされた。このうち太陽光がどのぐらいになるかは不明だが、これまでの実績からすると約9割が太陽光発電。そうなると、30年度の太陽光発電のエネルギーミックスの目標値である6400万キロワットに到達したことになる。これら設備は遅くとも5年以内には運転開始するだろう。ここでしかるべき手を打たないと国民の経済的負担が増加することになる」と警告する。