いじめ問題が発生するたびに、問題視されるのは「教育委員会」という組織の姿勢だ。今回も、「一般社会通念でとらえて、いじめではないのか」と文科省より指摘されるほど、取手市教委の判断はあまりにも一般常識から乖離していた。
そもそも教育委員会とは、地域の子どもたちがよりよく育つために、教育環境の改善に取り組む組織だ。委員は専門的、政治的に偏らないよう、地域から多様な人材を幅広く集められる。筆者も取材で教育委員会の委員にお会いする機会があるが、仕事を持ちながらも、教育をよりよくするために熱心に取り組んでいる方が多く、頭が下がる。
「見て見ぬふり」や「いじめ隠し」が横行
一方で、委員は選挙で選ばれるのではなく、首長による任命制で、委員の議論も公開の義務はない。このため教育委員会の意思決定は「ブラックボックス」といわれる。誰が意思決定をしたのかわからないからだ。
ある学校関係者は、教育委員会のこうしたあり方に憤りを隠さない。「委員はお飾り、名誉職で、提案はしますが人事権などの権限はありません。下の行政組織が実質、ほとんど決めますが、この行政組織がなかなか動きません」。
教育委員会の仕組みに詳しいティーチ・フォー・ジャパン(以下TFJ)の松田悠介代表理事は、専門的な知見が組織内で周知徹底されていないことが問題だと指摘する。
「教育委員会の事務方の半数は役所の職員ですが、2~3年に1回人事異動があり、せっかく政策を考えても実行する人は別の人になります。たとえば大津のようないじめ問題がおこると引き締めが行われますが、人が変わると風化する、の繰り返しです。いじめは2~3年に1度ぐらい社会問題化していますが、教育委員会の人事ローテーションの間隔と重なりますね。」
文科省は、「いじめ問題はどの学校にもおこるもの」「いじめの件数の多い学校は、いじめにきちんと向き合っている学校」としており、きちんと把握と報告を行っている学校を評価するように指導している。しかし学校や教育委員会には、いまだに「いじめのある学校や地域は問題だ」という意識が強く、「見て見ぬふり」や「いじめ隠し」が横行している。
「評価を変えますよと言われても学校の現場では無理。じゃあ、いじめをいっぱい作ろうとはなりませんよね。学校は怒られるのが嫌だからいじめを隠蔽します。なので、教育委に上がるのは重篤なものになります」(前出の学校関係者)