では、教育委員会がいじめ問題にしっかり向き合える組織になるにはどうすればいいのか? TFJの松田氏は、ヒントはアメリカにあるという。

「取手市のケースでは、コンプライアンスとガバナンスが機能せず、委員会は対応が後手後手になりました。アメリカの場合だと、学校では法律の専門家の知見を取り入れたガイドラインが作られていて、いじめが起きた場合に教育委員会がするべきことも明文化されています」

松田氏によると、アメリカではいじめ問題の一次対応は法律の専門家が行い、学校の先生は関与しない。しかし日本では、「教育行政の独立」という錦の旗のもと、学校や教育委員会が対応するものの、「ガイドラインがないため対応に一貫性がなく、不信感が増幅することが多い」(松田氏)という。

学校外の知見を入れよ

また、「スクールソーシャルワーカー」として中学校の支援にあたっている弁護士の平林剛氏も、いじめ問題の解決には学校外の知見を入れることが必要だと強調する。

「学校の先生たちはすべて自分でやろうとしています。しかしいじめの対応には、事実認定能力やスキルのある弁護士、精神科医、カウンセラーなども入り、多種多様な人たちの立場を生かしたチームワークが必要です」

平林氏は、教育委にもさまざまな知見、特に対人援助に優れた人材を集めることが必要だとしたうえで、「福祉行政には専門性のある福祉職の採用があるように、教育委員会にも教育の専門職を採用することも検討するべき」と提案する。

取手市教委の問題は、決して他山の石ではない。「いじめはどこでもおこる」との意識を教育現場でさらに徹底すること、そして学校や教育委は多様な知見を結集し、開かれた組織となることがいよいよ必要だ。

鈴木款(すずき・まこと)
フジテレビ解説編集部シニアコメンテーター
1961年北海道生まれ、神奈川県育ち。早稲田大学政治経済学部卒業後、農林中央金庫に入庫し外為ディーラーなど歴任。1992年フジテレビ入社。営業局、報道2001ディレクター、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。ライフワークは教育取材。趣味はマラソン、トライアスロン、映画鑑賞と国政選挙分析。3男の父。フジテレビ「ホウドウキョク」(https://www.houdoukyoku.jp/promotion/app)に出演中。
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