厄介な英語でのスピーチ。内容を暗記できればいいが、本番では緊張して大失敗に終わるケースも多い。米マサチューセッツ大学MBA講師の齋藤浩史氏は、「大中小の法則を使え」という。日本人に最適化された英語スピーチの極意とは――。

英語スピーチで必ずぶち当たる壁

グローバルな世界に少しだけ慣れてきたビジネスパーソンにとって、最初にぶつかる難題は英語でのスピーチではないでしょうか。ただ、スピーチというとプレゼンのような大勢を前にしたセッションを想像してしまいがちですが、ここでは仕事や会議における発言のことだと思ってください。

ただ、それが仕事の一般的なスピーチであったとしても「日本語でも苦手なのに、外国語でスピーチをするなんて……」とハードルの高さを感じてしまうかもしれません。そこで、多くの人は応急的な英語スピーチを学ぶため英会話スクールに通いはじめるわけですが、そのスピーチが実際に仕事で求められているものは違うことに気づくのです。

英会話スクールで教わるビジネス英語と実際のスピーチでは何が違うのでしょうか。

実際にいくつかの英会話スクールで働いた経験からすると、スクールにとって生徒はお金の出し手で、「お客様」ですから、生徒の英語力の乏しさを厳しくツッコむことはありません。むしろスクール側は生徒を理解しようと努力することになります。生徒は会話を自由に楽しんでいると思っていても、相手は多少の我慢をしてくれているものです。

一方、ビジネスの場になれば、立場は反対になります。営業現場であれば、お金の出し手は取引先です。このためムダな話は極力抑え、要点を明確に伝えることが求められます。これは組織内部のコミュニケーションにも当てはまることでしょう。つねに張り詰めた状態というわけではないと思いますが、端的にわかりやすく話すことは暗黙のルールとなっているはずです。

このように、スピーチは立場や利害関係によって異なってくるのです。

たとえスクールで学んだ英語とビジネスの現場で使う英語が違ったとしても、慣れてくればスピーチも上達すると思われるかもしれません。ところが、「やはりうまくいかない」という声をよく聞きます。立場が逆転するとプレッシャーを感じるのかもしれません。ミスの許されない相手を前にしたときほど、スピーチの途中で話す内容が飛んでしまい、ドツボにはまってしまうのです。これは英語でスピーチするのに慣れている筆者でも経験があることです。