緊張を避けるために、多くの人はスピーチの内容を暗記しようとします。確かに暗記はウソをつきません。しかし、間違いに対して過度に敏感になってしまうと、文章を思い出すことばかりに気を取られてしまいます。このため、いったん間違えるとスピーチ全体が壊れてしまう、というリスクに注意しなければいけません。
「文章を一段落、まるまる抜かしてしまった」とか「文法を間違えた」などと聞くと、日本人の英語に対する内向きさがわかります。こうした「失敗談」がでてくるのは、日本人同士の「内向きの英語」になっていて、スピーチする相手(外側)と向き合っていないからです。このような意識では、英語力の成長は頭打ちになってしまいます。英語は言語であるため“相手に伝える”という外に発信する目的でなければ意味がないのです。
では、日本人が「外向きの英語」を実践するには、どうすればいいのでしょうか。
まずは緊張をとくために、“ある程度”の自由度を許容し、相手と向き合う余裕をつくることです。
英語でも伝わる「大中小の法則」とは
私が教えるビジネス英語研修では、話す内容を抽象度の大中小に従って3つの枠に分けることを教えています。文章を抽象度の高いモノから低いモノへと流れる構成にすると、該当する抽象度の枠内であれば自由に話すことができるので緊張しづらいのです。また、流れが決まっているので最後までスピーチが脱線することもありません。私はこれを「大中小の法則」と名付けて教えています。この大中小の法則は、文章全般に適用できる魔法のようなものなのです。
今回は、大中小の法則を使った具体例をひとつ挙げてみましょう。例えば、以下のような図を説明するとしたらどうするでしょうか。
ほとんどの方が、目に見えるモノをひとつずつ説明しようとするのではないでしょうか。しかし、それでは及第点しかとれません。相手にわかるように伝えるというのは、三次元の世界であり、奥行きのある説明が求められます。そのためにも、まずは全体像を説明し、そこから抽象度を下げて細かく説明していくことが大事です。
刑事ドラマで主役の刑事が現場検証する時、テープレコーダーに現場の様子を録音しているシーンを見たことがあると思います。注意してみると、その時、「事件の概要」、「現場の(その捜査官の)主観的印象」、「細かい点」という順で声を吹き込んでいることがわかるはずです。こうすることで、相手にとって二次元だったモノの存在が、三次元へと変わりその時の情景や形が浮かび上がってくるのです。