英語を学ぶ本来の目的は、相手と正確なコミュニケーションができること。テストで高得点を取ることを目的としていれば、「ビジネス英語」はいつまでも身につかない。米マサチューセッツ大学MBA講師の齋藤浩史氏が、ゴールドマン・サックス(GS)で学んだという「誤解のないビジネス英語」のポイントを解説する――。

英語を学ぶ目的はコミュニケーション

ビジネスパーソンが英語を学ぶ目的は、コミュニケーションを取ることであるはずです。しかし英語の学習方法を解説する本の多くは、テストで高得点を取ることが目的となっています。これでは英語は上達しません。

現在の日本の教育システムでも、中心にあるのはいまだに受験英語です。与えられた英語学習をこなすことがルーティンになっていて、「相手にどう伝えるか」という視点が欠けています。

こんな風に書くと、「自分の英語力もまだ完成できていないのに相手のことを気にするなんて……」と心配する人がいそうです。それでは、あなたの英語力が「完成」するのは、いつでしょうか。英語力を測るには、筆記テストより、簡単で確実な方法があります。それは英語でコミュニケーションを取ることです。自分が発した言葉が正確に伝わり、相手が行動してくれるかどうか。重要なのは「正確に伝わっているかどうか」なのです。

あなたの「理想の英語」をいくら追求しても、相手が間違った行動をとってしまえば、それは「間違った英語」と判断せざるを得ません。最悪の場合、誤解をきっかけに相手と衝突してしまうこともあるでしょう。そんな事態を避けるために、相手に正確に伝わり、行動しやすい英語を目指す必要があります。

私は外資系証券会社のゴールドマン・サックスで働いた経験があります。そこではあらゆる国籍の人が英語を使っており、だからこそ、「相手に正確に伝える」ということが重要になります。そこで心がけたのは、「人の頭に入りやすい文章を構成する」ということです。難しい表現は必要ありません。できるだけ簡単に、短く、わかりやすい方法で伝える。そのほうが、誤解が少なく、正確に伝わります。

人が何かを説明するとき、その対象は「動きがあるパターン」と「動きがないパターン」の2つに分けられます。前回、ご紹介した「大中小の法則」(「英語スピーチ"丸暗記"が失敗しやすい理由」)、は、「動きがないパターン」でした。今回は「動きがあるパターン」についても紹介したいと思います。

「動きがあるパターン」とは、説明の対象が動いているので動詞を使うケースと考えていただければ結構です。