こうした新しい商品の投入にはリスクも伴う。若い世代のお客には支持されても、昔からコメダを支持する常連客(特に年配のお客)にそっぽを向かれる危険性もあるからだ。

「長年の顧客」と「新たな顧客」とのバランス

創業して50年を迎えるコメダには、長年にわたり“生活習慣”のように店に通う常連客も多い。そして長年の常連客ほど高齢化していく。こうした年配の常連客に寄り添う姿勢も大切だ。総じて年をとれば注文も保守的になる。その意味では、前述した「変わらずに、同じ味の商品を提供し続けるのがコメダのやり方」という意見もかみしめる必要がある。

どこかホッとするコメダの座席(撮影=本田匡)

コメダブランドとしての立ち位置もある。筆者は、全国展開をするコメダが各地方で受け入れられているのは「昔ながらの喫茶店のイメージを守っているから」だと思う。コメダがスタイリッシュな店に変貌したら、常連客から反発を受けるだろう。

一方で、ずっと同じメニューではお客も店も刺激を受けない。ロングセラーブランドで怖いのは、時代に取り残されることだ。次の世代に「昔、お母さん(おばあちゃん)が使っていた」と思われると世代交代が進まず、やがて消えゆく存在となる。「定番品」と「期間限定品」の使い分けは、そのバランスをとったのだろう。

そして、新商品のスタンスをどこに置くかの答えは、「どこかホッとする」だと思う。コメダのような“ノスタルジーブランド”にとって、次々に投入する新商品は、流行の最先端ではなく、若い世代からも「なんかいいよね」と思われることが大切なのだ。 

高井尚之 (たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王 情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(プレジデント社)がある。これ以外に『カフェと日本人』(講談社)、『「解」は己の中にあり』(同)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)、『なぜ「高くても売れる」のか』 (文藝春秋)、『日本カフェ興亡記』 (日本経済新聞出版社)、『花王「百年・愚直」のものづくり』(日経ビジネス人文庫)など著書多数。
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