黄金の15年を生かすという観点に立てば、60歳での定年時に、退職するか、65歳までの雇用延長を選択するかは重要なポイントになるだろう。黄金の15年の3分の1にあたる期間を今までと同じ会社で働くかどうかの選択である。

定年後は思い切って裸一貫からでもやっていこうと思えば雇用延長に手を挙げるという選択はないだろう。一方で定年退職すれば孤独な日々になることが予想されるのであれば、とりあえずは雇用延長に手を挙げておくという判断もある。また経済的な面も考慮には入れておく必要があろう。

50代から「定年後」を検討せよ

個人的に気になるのは、会社での仕事を苦役だと考えている人が少なくないことだ。その苦役な仕事をさらに5年間延ばすことは得策ではないだろう。いずれにしても諦めずにチャレンジする気持ちは持っておきたいものだ。

それでは、定年時の選択において最も大切なことは何か。

多くのイキイキした定年退職者を見ていると、人生の後半戦を「どのように過ごしたいか」という主体的な意思や姿勢が重要だとわかる。そこが分岐点のような気がしている。そう考えると、やはり50代のうちから「定年後」を検討することが求められる。漫然と何も考えていなければ、黄金の15年をふいにしてしまうかもしれない。せっかく生まれてきたのだから自らの人生を大切にしたいものだ。

楠木新(くすのき・あらた)
人事・キャリアコンサルタント
1979年 京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に、 経営企画、支社長等を経験。勤務と並行して、「働く意味」をテーマに取材・執筆に取り組む。15年3月定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学人間科学部非常勤講師。著書に 『人事部は見ている。』、『サラリーマンは、二度会社を辞める。』、『経理部は見ている。』 (以上、日経プレミアシリーズ)、『働かないオジサンの給与はなぜ高いのか』(新潮新書)、 『左遷論』(中公新書)など多数。17年4月に『定年後-50歳からの生き方、終わり方』(中公新書)を出版。