ここで「定年後」の意味合いを会社員当時の労働時間との比較で勘案してみよう。
60歳で定年退職して、日々の睡眠、食事、入浴などの必要な生活時間を除いて考えると自分の自由になる時間は、1日11時間程度とみていいだろう。私の実感でもこのあたりだ。75歳を超えると介助を受ける立場にもなるので自由時間は半分の5.5時間、75歳から残り10年を生きると仮定して、定年後の自由時間を計算してみる。
男性では、11時間×365日×15年(60歳から74歳まで)+5.5時間×365日×10年(75歳から84歳まで)≒8万時間になる。女性ではそれよりももっと長い(そのうち黄金の15年は6万時間)。
一方で厚生労働省の資料で、所定内労働時間と所定外労働時間を合わせた年間の労働時間は、1783時間(「毎月勤労統計」、事業所30人以上)。21歳から60歳まで40年間勤めた総労働時間は8万時間に満たないのである。
8万時間の自由、不自由
50代にもなると先が短いと思っている人もいるが、若い時から定年まで働いてきたすべての労働時間よりも長い自由時間が待っているのである。これほどの裁量のある時間を持つことができるのは歴史上もなかったことだろう。まさに「黄金の15年」なのだ。
しかし現実には長い自由時間の中で立ち往生してしまっている人も少なくない。使いこなすのに苦痛と感じる定年退職者もいるのである。しかしそれを会社のセイや社会のセイにはできない。もしそうしたとしてもそこから解決策は見いだせないだろう。他方でイキイキしている人を見ていると、定年後の特権はなんといっても時間を自分のためにたっぷりと使えることだと感じる。この両者の差はとても大きい。やはり「人生は後半戦が勝負」なのである。