自制心、やり抜く力のある子は、“あと伸び”する!

ただし、ここでポイントとなったのが、小学校入学時のIQはプログラムを受けた子どもの方が高くても、8歳頃には受けていない子どもと並んでしまうことである(一般的に脳の成長は8歳くらいまでに完成することと関係していると考えられる)。

これは何を意味するのか。

プログラム(授業と家庭訪問)の学力への効果は一時的なもので長続きしなかったということだ。不思議なのは、それでも、その後、さらに大きくなってから前述のような結果(高卒割合が高い、成人後の所得などが高い)につながったことだが、その理由をヘックマン教授が慎重に分析し、こう結論付けたのだ。

<前出のプログラムを通じて、子どもたちの「非認知スキル」が伸びた>

中室准教授はこう解説する。

「実はペリー幼稚園のプログラムでは、『読み書き』といった認知スキルを伸ばす活動と、決まりのある遊びを通じて自制心、社会性などの非認知スキルを伸ばす活動、さらに親への指導という3つの要素が混在していました。

そこで2010年からシカゴ大学のジョン・A・リスト教授が、この3つの要素を切り分ける大規模な後続研究を始めました。認知スキルを鍛えることに特化した幼稚園と、非認知スキルを鍛えることに特化した幼稚園、さらに親だけに指導を行うペアレンティングスクールをつくり、子どもたちの成長具合を調べています。まだ7年目ですが、現段階でもっとも優秀な子どもが育っているのが、非認知スキルを鍛える幼稚園だそうです」