iPadでロールプレートヨタの面談指導法
面談の流れは、(1)発言のしやすい場をつくる「アイスブレーク」、(2)「見る」「聴く」「伝える」ことを通じて、「感じる/感じさせる」を実践する「面談」、(3)やる気を持って面談を終える「クロージング」の3ステップ。この順番であらかじめ準備し、シミュレーションしておくとよいのだそうだ。
講義の後は、3人1組で面談のロールプレー演習。3人が部下役、上司役、観察役に分かれ、ケースを30分かけて読み込む。その後、10分間でロールプレー面談を行う。面談の様子はiPadで撮影され、終了後に3人でフィードバックしあう。動画は社内のイントラネットにアップされ、該当者が見られる状態になるという。
その後も、研修参加者全員での全体討議や講師からの講評をはさみながらロールプレー演習が進められる。研修ではこれを「成果のあがらない年上の部下」「プライドの高い若手社員」「そこそこの意識で働く事務職」といった3つのケースについて、かわるがわる夕方まで続け、最後に全体のまとめをして終了、というのが8時間の研修プログラムの大まかな流れだ。
フィードバック面談は「立て直し」のお手伝い
このトヨタの研修に参加した中原氏は「正しいフィードバックを上手に行うことは、正しいフィードバックを自ら受けることからはじまる」と話す。
「部下面談の場は、上司が部下に対して、フィードバックする場ですが、通常、面談は密室で行われ、面談そのものについてのフィードバックを受ける機会はありません。しかし、フィードバックはフィードバックを受けることによって上達します。トヨタの研修では、ロールプレーという失敗が許される安全な場で、部下との具体的な場面を想定した面談を行い、その面談についてのフィードバックを受けることができます。しかも、iPadを使って撮影された自分の姿を客観的に見るのは、それだけでとても効果的なフィードバックとなります」(中原氏)
また、研修の終盤に研修講師が「面談は、相手がやる気になって終われるようにしなければならない」と受講生に説明した場面を、中原氏はこう振り返る。
「多くの人がフィードバックを『評価を通知すること』だと誤解していますが、基本は『情報を提示すること』と『立て直しをすること』の両方を含んでいます。フィードバックを『評価を通知すること』だと考えると、相手にとって耳の痛い結果を通知することで、パワハラと言われそうで叱れない、はっきり言えない、と苦手意識を持たれるかもしれません。しかし、面談は『立て直しのお手伝いをする場』と考えれば、前向きにとらえることができるはずです」
次ページからはトヨタの「評価者訓練」研修を参考に、部下別のロールプレーを再現していく。