「原発4基」の契約でリスク遮断は不透明

焦点は、WHの破産法11条申請で、本当に「リスクを遮断した」と言い切れるのかどうか。東芝自身も発表資料で、「16年度業績への影響については現時点ではまだ影響額を確定できておりません」としている。

現在、明らかになっているのが、東芝のWHへの「債務保証」の存在。昨年6月に公表した東芝の有価証券報告書によると7934億円に達する。29日の発表では2月末時点の親会社保証は6500億円規模としており、これに東芝のWHへの債権が1756億円あるとしている。これを全額引き当てた場合の当期最終損益ベースでの追加悪化は6200億円になり、2月14日時点で3900億円の赤字だった最終損益が1兆100億円になるとしているわけだ。

さらに、WHが米国で受注している原発4基を完成させられなかった場合の「損害賠償」についても親会社として負担する契約になっていることを明らかにしていた。WHの再生手続きを進める中で、発注元の電力会社とWHの間で建設コストを巡る負担割合がどうなるのか、その際に東芝の賠償分はいくらになるのか、なかなか簡単には合意できないのではないかと思われる。そうなった場合、東芝はいつまでたっても「リスクを遮断」することができなくなる。

もうひとつ懸念されるのが東芝の資金繰りだ。「のれん減損」というと、通常は買収した価格と実際の価値の差額を損失処理するという意味で、新たな資金負担が生じないケースをイメージしがちだ。だが、WHの場合、原発建設費の追加負担など実際に資金が必要になるものが多いとみられる。WHの借金に対する親会社保証にしても、履行すればWHに代わって返済する資金が必要になる。通常の長期借入金の約定返済も毎年2000億円以上ある。

東芝は3月30日に臨時株主総会を開いてメモリ事業の会社分割を決めた。「稼ぎ頭」とされる半導体事業を切り離して、株式の過半を国内外の企業に売却する予定だ。金額は1兆円を超すとも言われる。要は巨額の損失が出る分を事業売却の利益で穴埋めしようというわけだ。WHの損失で3月期末に債務超過になっても決算発表を行う5月以降に売却が決まっていれば債務超過解消にメドが付く。一応、バランスシートの辻褄は合うということなのだろう。