長時間労働が社会問題になるほど「休めない」というイメージが強い日本だが、欧米やアジア諸外国と比べ、本当に休日は少ないのか? 各種データをもとに検証してみよう。

休むために働く国、体調不良でも働く国

「『日本はなぜ、これほど休みが多いのか?』と、どの企業でもグローバル本社の人事担当者から聞かれました」

米国、ヨーロッパ、アジアに本社を持つ複数の企業で日本法人の人事責任者を務めたことがあるリブ・コンサルティングの山口博氏は当時を振り返ってこう語った。

長時間労働が社会問題になるほど休めないイメージが強い日本なのに、これは一体どういうことなのだろうか。

amanaimages=写真

実は日本の祝祭日の日数は、諸外国と比べて群を抜いて多いのだ。バカンス大国と呼び声の高いフランスが年間9日、米国が10日だが、日本は欧米勢より1週間以上長い17日。同じアジア勢の香港が13日、シンガポールが11日と続く(図1)。

この祝祭日の多さが冒頭の外国人社員の発言につながっているのだ。

対して有給休暇についてはどうか。

フランスでは有休付与数、消化数とも30日で100%消化している。ほかの上位はスペイン、ブラジル、オーストリア、イタリアと総じてヨーロッパが多く取得している。日本は付与数20日、消化数10日。取得率50%。韓国は日本よりさらに少なく、アジアはヨーロッパに大きく水をあけられている。

意外に有休が少ないのが米国だ。消化率こそ7割超だが、付与数においては日本より少ない19日にとどまる(図2)。祝祭日も多くはないので、総じて休んでいない国といえるだろう。

これらの祝祭日と有給休暇を合わせた休暇日数合計を見ると、やはりフランスやスペインが39日など、ヨーロッパが上位を占める。日本は27日とランキングの中位に入る一方、米国は24日、アジア勢では、シンガポールは25日、韓国は17日と日本を下回る(図3)。

有休を取りにくい日本と米国、たっぷり休むヨーロッパ勢。この違いについて、山口氏は「仕事に対する使命感」にあるとみる。

「ヨーロッパでは不定期に4週間程度バカンスを取ることがよくあります。日本人のように休暇中も仕事のメールを気にする人はほとんどいません。『休むために働く』といったイメージです」

実際、山口氏は欧州系の企業で勤務していたとき、ヨーロッパ人との感覚の違いをまざまざと感じたという。ヨーロッパ人の責任者がバカンス中で不在のため、彼の承認が取れず、従業員の給料が遅延するかもしれない危機に見舞われた。なんとか遅延は免れたが、責任者の滞在先へ連絡をつけてもすぐにつかまらず、肝を冷やしたという。