枕元にも常に「発想ノート」を置いて、寝入りばなや、ふっと目が覚めた明け方の4時頃に思いついたことを書き留めるようにしています。ノートの種類は大学ノートからダイアリー、メモ帳などさまざまです。

(左)社長就任以来のノート類。(右)ペンチ状の工具が看板商品の「ネジザウルス」。高崎氏愛用の黄色いノートパッドの横は「発想ノート」の実物。商品改良のアイデアは図形で描くことも多い。

脳に関する最近の研究で、人は睡眠中にその日体験したことや、得た情報を脳内で整理していることがわかってきたそうです。日本の製造業は「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」を大切にします。それに倣えば、いいアイデアは就寝中、頭の中で「5S」がしっかり行われたときに生まれるのではないでしょうか。実際、会合などでお酒を飲んだ翌朝は、ろくなアイデアが浮かびません。脳内の「5S」が、アルコールによって邪魔されるからです。

寝ているときに書いた字は、翌朝見るとミミズが這ったようにしか見えず、読めないことがよくありました。そこで最近は、手書きメモの代わりに、スマホで自分宛てにメールを送るケースが増えています。そうすると翌朝、会社のデスクで忘れずに確認することができるので、とても便利です。スマホのカレンダー機能も活用し、期日がある「TO DO」はそこに落とし込んでいます。

以上は発想を書き留めるメモですが、それとは別に、この1年ほど愛用しているのがA4判のノートパッド(レポート用紙)です。会議やビジネスセミナーに参加するときは必ず持っていきます。

ノートと自分との「キャッチボール」

ノートパッドを使うときは、1枚の紙につき、1つの事柄を書くのを基本とします。常に記入するのは、日付とタイトル、セミナーであれば講演者の名前です。ふつうのノートと違い、1枚ずつ紙が分かれているので、分類と検索がしやすいのです。内容が複数枚にわたった場合は、ホチキスで留めてまとめます。関連する新聞の切り抜きなども、ここへ貼り付けて一緒に保存しておきます。

こうしたノートはそれ自体が価値を生むわけではありません。価値を生むのは、あくまでも「自分の頭脳」です。のちにノートを見返したときに、ある情報がきっかけで、考え続けていた課題を解決するアイデアをふと思いつく。そしてその発想を、またノートに書き留める。

そんなふうに「5S」で情報が整理整頓されたノートと、自分との間でキャッチボールを繰り返すことが、アイデアを生み出すうえでは大切だと私は考えています。当時は何も感じなかったメモ内容が、3年後に読み返したら宝の山だった、ということも珍しくないのです。