「1冊に全部」が情報整理の絶対条件

私のノートの使い方は「1冊に集約する」と「『型』をつくる」の2つに要約できます。いずれも、私がまとめた無印良品の店舗運営マニュアル「ムジグラム(MUJIGRAM)」の思想に通じるところがあります。

良品計画 前会長 松井忠三氏

無印良品の全店舗では、すべての業務を全13冊、約2000ページで解説した「ムジグラム」というマニュアルを常備しています。私が良品計画の無印良品事業部長だったとき、約5年をかけてまとめました。ディスプレイのルールから衣服のたたみ方、商品管理、接客の方法まで、店舗業務のすべてが記されています。

「ムジグラム」をまとめるまでは、100点満点の店がある一方で70点の店もあり、陳列やオペレーションの質にはバラツキがありました。

「カリスマ店長」のいる店は質が高いのですが、すべてのスタッフがそういう人材とは限りません。しかもそうした優秀なスタッフも、自分のやり方を明文化していなかったので、他店には広がりませんでした。

そこで私は、誰でも90点の仕事ができるように「ムジグラム」を作りました。当時の良品計画は2000年に38億円の赤字に陥るなど苦戦していましたが、これがきっかけになってV字回復を果たせました。

ここで大切なのは、「業務に必要なことが1カ所にすべてまとまっていること」ですが、実は私のノート術も同じ。「ムジグラム」同様、すべての情報を年区切りの手帳1冊に集約しているのです。

情報があちこちに散逸していては、適切な情報整理ができません。私にとって「1冊に全部」は絶対条件です。主な用途はスケジュール管理。見開きに週間予定表が1週間分入っていて、左ページが曜日ごとに7分割。そこに会議や講演、会食の予定などを記入し、あふれた分や備忘は右ページに補足します。

別ページの年間カレンダーには、先々のセール計画などを書き込みますが、翌年3月分までしかないので、それ以降の予定ははみ出して記入。翌年の手帳に移行したら転記します。

私が手帳に求めるのは、1週間や1年という期間を見渡せる一覧性です。スマートフォンも持ち歩いていますが、一覧性が低いので予定管理には不便。ときには「やるべきこと」が多すぎてスペース不足になりますが、そのときはふせんを貼り足します。「1冊に全部」にこだわっているからです。