最高の人材ほど、自分が活躍できる場所かどうかを知りたがる
――3つ目はなんでしょうか。
【溝口】3つ目は「居場所」。多くの人は、ビジョンが大きければそのストーリーの一員になりたいという欲求を持っているのではないかと思うのです。そこは自分が活躍できる場所なのか、中心となって自分のバリューを発揮できるのかということが大事になってきます。。最高の人材であればあるほどそうです。「自分はいなくてもいいんじゃないか?」と思われたら、その方が入ってくれる可能性は下がります。だから居場所はすごく重要です。
――FiNCにはさまざまな分野の専門家が集まっていますが、専門分野を持つ方を口説くのは難しいのではないですか? そこはどうやってアプローチしていくのでしょう。
【溝口】企業の経営者は将棋でいえば王将です。王将の特徴は、盤面上で縦横斜めに一つずつ動けること。前職の経営時代も、FiNCでも、それこそ税務会計から、法務、営業、アライアンス、交渉、ファイナンス、エンジニアリング、人事戦略・採用、マーケティングなど幅広くやってきました。ですから、それぞれの領域のプロフェッショナルと意見を戦わせることができるくらいの知見はあります。質問をして、その人がどこまで深いのかある程度想像することはできます。その中で、FiNCで得られるであろう経験を伝えています。ただ、上に行く人が持つべき資質に関してはどんな領域でも共通だと思っています。
上に行く人が持つべき資質とは
――上に行く人が持つべき資質とは、どのようなものでしょうか?
【溝口】いくつかありますが、地頭がいいというのがあります。私が考える地頭のよさというのは、生まれつきの頭の良さという意味ではなく、物事を論理的に構造化するスキルとそれをもって仮説構築と検証を積み重ね、そして人よりも早く本質をつかむ力のことを指します。あと、やはりコミュニケーション能力ですね。コミュニケーション能力というものをもうわかりやすく言えば、「相手の立場で物事を考え、そして行動を起こせる能力」と言い換えることができます。「相手が部下であれば部下の立場」、「相手がパートナーであればパートナーの立場」、「相手が市場(マーケット)であれば、市場の立場」で考えて行動できなければ、人は動きません。
これら二つを整理すると、上に行く人というのは、早くに本質を掴み、そしてそこから正しい戦略を導き、さらに人を動かしながら物事を前に推進していく力を持った人といえます。
コミュニケーション能力に関係することで、一つ重要なことを付加すると「愛嬌」があります。意思決定をする側の立場に長く立っている人は理解してもらえると思いますが、意思決定というのはいつも簡単なケースばかりではありません。また人を動かす、人に何かをお願いする際も、いつも耳障りの良い内容ばかりではありません。「こんなお願いをしたら、きっと嫌がるだろうな」、「この会社と組んだらあの人は気分を害すだろうな」、「この人事をしたらきっとあの人は不満を持つだろうな」、経営をしていればついつい決断を先送りしたくなることばかりです。「正義の反対は悪ではなく、また違った正義」と当社では定義していますが、最後は論理ではなく情理で人は動きます。愛嬌のある人はこうしたコンフリクトを越えていくことができます。
――最高の人材を集めるために必要なこと。最後の4つ目はなんでしょうか?
【溝口】4つ目は「実現可能性」と言っています。大きなビジョンがあって、リターンが大きくて、居場所がある、そして最後にその実現可能性が高ければ参画しようと思いますよね。でも、「世界一になる」と掲げれば実現可能性は下がる。「日本一になる」なら当然、実現可能性は上がる。両者は反比例の関係にあります。最後にここを越えて相手を動かすことができるかが重要です。
FiNCは非常に大きなビジョンを掲げています。本気でGoogleとかFacebookを超える会社を作りたいと考えていますし、描いているロードマップが実現すれば、GoogleやFacebookを超えることは不可能ではないと思っています。