本当に有能な人材は、大きなテーマに集まる

『起業家のように考える。』(田原総一朗著・プレジデント社刊)

【溝口】ただ、多くの人の欲求は、人に必要とされたい、人に褒められたいとか、そういった承認欲求なのだと思います。僕は、縦軸が「大義」とか「志」とか「ビジョン」といった自己実現欲求だとしたら、横軸が女性にモテたい、お金持ちになりたい、人からもっとちやほやされたいといった承認欲求だと思っています。僕は横の承認欲求を超えることなく、縦の自己実現に向かうことは難しいと思っています。

でも、実際は、横軸を満たしていけばいくほど、意外と気にならなくなるものだと思っていて。横軸を満たしていくと、縦軸のほうにどんどん向かっていくと思うんです。そういう意味では、モテたいとかお金持ちになりたいとかでいい、それをまず早く満たしたほうがいい、とアドバイスしています。

――起業経験のある方はきっとそこが満たされて、もっと大きいテーマに惹かれるようになるのでしょうね。

【溝口】まさにそのとおりです。FiNCは社長経験者が17~18人いるのですが、僕がFiNCの幹部たちを表現する際によく言うのが、「彼らは二者択一をしてきた人たちだ」です。世の中を変える可能性はないかもしれないけれどそこに自由はある会社の経営者でいるか、世の中を大きく変える可能性のあるチームの一員になるか。当社の幹部たちは後者を選んだ。そこは自由じゃないかもしれないし、困難な道かもしれない。けれど彼らは肉体的・精神的自由のさらに先にある真の自由を掴むためにFiNCの門を叩いてくれたのだと思っています。

僕は、採用の時にも「あってもなくても誰も困らない会社をつくる気は全くない」ということを強調して伝えています。小さな達成で良しとする気もありません。それはFiNCの役割じゃない。FiNCにとっては会社が倒産することと、年成長率10%を20年間続けたけれども社会にインパクトを起こせなかった状態は同じです。我々は本気でビジョンに向かっている会社です。採用の時も「目の前の人材はビジョンを実現する上で必要な人材か」という点を最も大事にしています。極端に言えば、それがあればそこにビジョンへの共感はいりません。FiNCでしか救えなかった人を、他の会社やサービスでは救えなかった人をどれだけ多く救えるか。それこそが我々の存在価値なんです。

【編集部より】FiNCはどんな企業なのか、同社が提供する「モバイル×健康」とはどんなサービスなのかについては、田原総一朗氏がじっくりインタビューしています。溝口氏とFiNCについて、詳しくは書籍『起業家のように考える。』をお読みください。
(細谷滝音=構成)
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