明確な経営ビジョンを持った経営者
ラッセル会長はこんなこともいっていました。
「通信事業会社が参入するとプラスチックカードがなくなることも十分考えられる。そうなると券面にあるVISAのロゴを使った宣伝ができなくなる」
当時は、スマートフォンはまだ影も形もなくて、やっと携帯が出てきたころだと思いますが、そのころすでに、そんな心配をしていたのですから、いまこうしてあらためて振り返ってみても、ラッセル会長が相当先進的な考え方ができる経営者だったということがわかります。ラッセル会長はたしか、イギリスの大手銀行の頭取出身だったと記憶していますが、日本の上場企業の経営者などと比べると、「レベルが違う」と思ったものです。
こんな経験をしているので、VISAの一強支配は永遠ではないし、アップルやグーグルなどがスマホを利用して決済事業に続々と参入するのを目の当たりにして、ラッセル会長の予言が現実になりつつあると思ったのです。
ラッセル会長の予言から二十数年がたっていることを考えると、その間、VISAなどの国際ブランドが、よく盟主の座を守ってきたといえなくもありません。大手の電話会社からはじまって携帯キャリア、そしてIT企業と盟主の座を脅かすことになるかもしれないライバルが入れ替わり立ち替わり現れたのですが、「帯に短し、たすきに長し」で、みんな消えていきました。
しかし、いよいよ本命と思われる、VISAにとって最強のライバルが登場し、日本に上陸したのです。(後編につづく)