日本で争う三井住友カードと三菱UFJニコス

そして、日本国内のクレジットカード会社も、VISAやマスターに倣って、あるいはその威光によって自分たちを大きく見せようと躍起になってきました。

その代表が三井住友カードです。いまでもVISAというと、三井住友VISAカードを思い浮かべる人が多いかもしれません。三井住友「VISA」カードという表記で、あたかも同社が国際ブランドのVISAを運営していると錯覚するかもしれません。しかし、これは誤解です。三井住友カードはVISAのメンバーには違いありませんが、国際ブランドを運営しているわけではありません。同社の親会社の三井住友銀行がVISAインターナショナルをつくる際、日本では初めてのプリンシパルメンバーになったので、それを記念していまだに社名に「VISA」の名前を残しているのです。

一方で、ライバルの三菱東京UFJ銀行は、三井住友カードのイメージづくりのうまさに手を焼いていました。なぜなら、世界のVISAにふさわしいのは、日本一の銀行の三菱東京UFJ銀行だと考えていましたから。当然自分たちがVISAとの付き合いでも優遇されるべきと思っていたのです。そこで、子会社のニコスと連携して、積極的にVISAに働きかけて、親密な関係を作り出しました。いまでは三菱の方が住友よりもVISAとの距離が近いとさえいわれるくらいです。

実際2016年10月に始まったアップルペイと、つづいて12月に始まったアンドロイドペイのサービスでも、三井住友カードがまっすぐにアップルペイに走ったのに対して、三菱陣営はあくまでVISAに義理立てして、アップルペイへの参加を渋ったという経緯があります(結局は参加しましたが)。また、三菱東京UFJ銀行は2016年の夏に他の銀行、カード会社に先行して、自らのVISAデビットカードのサービスでアンドロイドに対応すると宣言しましたから、おそらくクレジットカードでは三菱UFJニコスが対応することになるとみられています。いまは静観していますが、いずれはVISAと共にアップル+スイカ陣営と競い合うという方向に進むでしょう。アップルペイの参入はこうした国内カード会社のVISAとの距離を浮かびあがらせました。これは興味深い点です。