生産に特化し、農商工連携で補う
――六星さんは生産から加工、販売まで手がける6次化を実践していらっしゃいます。その経験から、事業領域を広げることについてどのようにお考えですか。
【軽部】私たちは長年かけて6次化を進めてきましたが、もし「今から6次化に取り組みたい」と相談を受けたなら、あまりおすすめしないというのが正直なところです。やはり6次化は簡単ではないので。例えば、トマトが余っているからケチャップやトマトジュースつくるとして、がんを予防するなど特別な付加価値のある商品をつくることができれば、注目されて売れるかもしれません。ただ、加工品市場はすでに飽和状態ですから、既存商品の類似品をつくっても、事業の柱になるとは思えないのです。
それよりも、農家は第1次産業に特化しながら、第2次や第3次の部分は商工業者と手を組む。農商工連携のなかでしっかりプランを立てて取り組むのが現実的ではないでしょうか。そうすれば、それぞれの強みを生かしながら、事業を広げていくことができます。
――海外マーケットへの展開についてはどうですか。
【軽部】政府は農産物の輸出を1兆円にまで増やすとしています。お蔭様で私もいろんな話をいただくので、手探りレベルで少しやってはいます。ただ、それが事業になるかといえば、一零細企業には難しいというのが実感です。米の場合、日本の米はただでさえ現地米に比べて割高で、物流費が加算されれば余計に高くなります。国内で精米して袋詰めしたとしても、輸出の過程で船内の劣悪な環境にさらされれば、品質でも勝ち目はありません。
まだ餅加工品のほうが可能性があるかもしれません。日本のような餅を食べる習慣がある地域はほとんどなく、馴染みはないと思います。ですが、餅つきや餅を飾るなど日本古来の文化としての食べ物といった情報をつけたり、一般的な食べ方でなくスイーツとして餅を使ったりすることで浸透させることはできるかもしれません。