認知症の疑いある/なしは歩き方でわかる

最新の研究で、100%ではないものの、認知症の疑いあり/なしを簡単に判断できる方法が見つかっています。それは「歩き方」を見るというもの。例えば、65歳以上の高齢者で、歩幅が広くスタスタと早足で歩いている人は認知症である可能性が低く、歩幅が狭くトボトボとゆっくりと歩いている人は認知症の疑いありです。

歩行速度で言えば「秒速0.8メートル」(分速48メートル)が一つの基準になります。これは医師が「サルコペニア」(高齢により筋肉量と筋力が低下する症状)かどうかを判断する最初の基準でもあり、そのまま放置するとアルツハイマーなど他の病気のリスクも高まります。

ただ、秒速0.8メートルというのは「青信号の間に横断歩道が渡りきれない」速度ですから、かなり遅いです。早期発見という観点から言えば「いつもより歩く速度が遅くなった」というように、歩行速度の“変化”を見るほうがずっと大切です。一旦遅くなり始めると、その先はもっと急速に遅くなっていくからです。

歩幅が狭い人は認知症リスクが3.4倍

なぜ、歩幅や歩行速度を見ることで、認知症の疑いのあり/なしがわかるのでしょうか? 脳の中でも運動と認知をつかさどる部位は別々で、そのメカニズムまでもが完全に解明されたわけではありません。ですが、歩幅や歩行速度と認知機能の関連性を裏付ける実証データは、世界中のあらゆる医療・研究機関から発表されています。

『歩くだけで健康寿命を延ばす! 認知症にならないための歩き方』(幻冬舎)の著者 椎名一博氏

例えば、東京都健康長寿医療センター研究所の谷口優研究員によると、歩幅を「広い」「普通」「狭い」の3グループに分けて追跡調査したところ、歩幅の狭い人たちのグループは広い人たちのグループに比べ、認知機能低下のリスクが3.4倍(女性は5.8倍)も高くなっていることがわかったそうです。

あるいは米国マサチューセッツ州で1948年から継続して行われている、平均年齢62歳の男女2400人を対象とした調査研究でも、歩行速度の遅い人は速い人に比べて認知症になるリスクが1.5倍も高くなっていることがわかっています。この調査ではMRIで脳の状態も調べていて、歩行速度の遅い人は脳の容積が小さく、認知能力テストでの点数も低くなる傾向があるとされています。

こうした調査や研究は世界中で幾つも発表されていて、枚挙にいとまがありません。歩行というのは単に足を前後させるだけでなく、腕や腹や背中を含めた全身の筋肉と、視覚・触覚・バランス感覚などあらゆるセンサーを稼働させる動作です。

それらはほとんど無意識のうちに行われますが、それを可能にしているのが脳の機能です。そこになんらかの異変が生じると、各部位への命令がうまく伝わらなくなってバランスが崩れ、歩幅や歩行速度に現れると考えられます。