「140字制限を撤廃しないで」と本社にレポート
――Twitterは動画共有やライブ放送のペリスコープなど、メディアリッチな方向に向かっているように見えます。しかし本来はシンプルさが特徴ではありませんでしたか?
【笹本】“140文字”がアイデンティティだったことは確かなのですが、Twitterの本質的な長所は“140”という数字ではありません。タイムラインに情報が流れていく中で、パッと見た時に各情報が認知しやすい一覧性の高さです。以前、ツイートの長文対応について議論もありましたが、タイムラインを流れていく情報をサッと認識できる限界を超えてしまい、リアルタイムで起きているさまざまな身の回りのことを見落としてしまうと判断しました。 特に日本では140文字でも工夫すればかなりの情報を詰め込めるため、140文字制限撤廃を行わないよう、かなり強いトーンで本社にレポートしたという経緯があります。Twitterは実に民主的な会社で、そうした意見を理由を含めてしっかりと精査してくれます。またオープンに様々なアイディアが社内で飛び交う。TwitterがTwitterとしてのカルチャーを保てているのは、そうした民主的な雰囲気も要因としては大きいですね。
アプリの使い勝手、「クジラが出ない」などの基礎改良
――つまり、タイムラインを一時停止させながら見なければ、状況の流れを把握できないようなサービスの拡張は行わないということですね。ペリスコープもTwitterの即時性とのマッチングが極めて高い。では、そうした自由で民主的な空気感の中で、どのような事業としての可能性が見えてきているのでしょう?
【笹本】ひとつは細かな部分でのユーザーインタフェースに改良の余地があります。もともとはWebで始まったTwitterのサービスですが、“アプリ”の枠組みの中で取り組まなければ進化できない部分もありました。そこで基礎に立ち返って製品としての価値を高めるため、地盤を固めようと創業者のジャック・ドーシーが声を上げ、地道に取り組んでいます。パッと見ただけでは大幅な変化は見えないかも知れませんが、公式アプリの質、サービスの応答性などさまざまな部分で改良が進んでます。あとはほら、クジラ※を最近見なくなったと思いませんか?(笑)
もうひとつはNFLや大統領選で、短文だけではないリッチ情報に関しても、見せ方次第でTwitterが適した場であると実証したことです。イベントがあれば、それを中心にさまざまなツイートが発生するため、それらを見ているだけでみんなと一緒にソーシャル視聴できる。まだ多分に実験的な面もありますが、参院選ではペリスコープを使って各政党の人たち話をしてもらう政見放送的なことトライしてみましたが、その場で反応があるのでとても良いものになりました。こうしたトライアルを来年以降は、さらに拡大していきたいと思っています。
※クジラ……Twitterのサーバが過負荷でつながらない時には、白いクジラがたくさんの鳥に網でつり上げられている絵が表示される。