Twitterを買収しても、特性を生かした経営は難しい
――Twitterの“身売り報道”には正直驚いたのですが、ズバリ買収交渉は存在したのでしょうか?
【笹本】私の立場では知らされていないため、噂だけで把握できていません。広告的な価値やTwitterが持つ利用者動向などのデータ分析事業が目的といった報道もありましたが、どの噂も断片的なものです。それにデータ分析事業だけを買おうと思っても、そもそものTwitterというサービスがダメになってしまえば、データ分析事業も成り立ちません。
――事前にリストラがあったことも、買収の噂を助長させていたように思います。
【笹本】Twitterの事業は、かなり特殊なジャンルです。Twitterは実にユーザー中心主義で、だからこそ自由で利用者の目線に合ったサービスが提供される、独特の(自由なボトムアップの)気風があります。それらが失われてしまえば、きっとユーザーは離れていくでしょう。仮に買いたいという企業があっても、Twitterの特性を活かした事業を続けることは難しいのではといった考えが社内にはあります。もし、仮に(買収が)あるとしたら噂に上った会社なのでしょうが、現時点では当面の間、単独でサービスを続けていくという方針を確認しています。
――“身売り”や“リストラ”といった言葉が報道で先行した理由の背景には、収益性が低いというイメージ、あるいは指摘があるのでは? とりわけ米国では、今後の成長性に疑問が投げかけられています。
【笹本】Twitterはまだ創業10年、上場してからは3年しか経過していない若い企業です。若い会社が早期に上場して大人の会社として成熟していくため、背伸びをしてさまざまな事に挑戦していた。成長期のTwitterは事業の形を変えてきたが、挑戦した結果、うまく行くこともあれば、失敗を認めて事業を整理する場合もあります。
再構築の結果、日本は本社直轄になった
――“リストラ”という言葉には「それまでの事業がうまく行かなくなり、しかたなく人員整理が行われること」というニュアンスがありますが、一方で本来の「Restructure(再構築)」の意味からすれば、市場環境の変化などに応じて会社の形を変え、人の配置を変える……再編することが中心でなければならないでしょう。今回のリストラはどのようなものでしたか? 一部では“身売り”といった表現も使われています。
【笹本】我々の事業は“売らなければならない”状況にはなく、過去最高の数字を出しているところです。“身売り”が必要な状況ではなく、本来、あるべきサービスの形、理想的なサービスを追い求める上で必要であれば話はするでしょう。実際、赤字は続いていますが、フリーキャッシュフローは増えていますから身売りは必要ありません。 一方で株式公開をしている会社ですから、成長戦略は描けていても、常に事業の最適化は必要です。株主に満足してもらえるような事業体質とするため、、全体を俯瞰して組織を再構築しています。集中すべき事業を絞り込んだ結果ですので非常に前向きなものです。その結果として、グローバルではポストを失う者もあったということです。 今回のリストラは大規模なものでしたから、組織構造にも変化が現れています。特に日本はアジアの拠点であるシンガポールの下部組織だったのが本社直轄となり、私が韓国とともに見ることになりました。本社から見た場合に「日本で何が起きているか?」の見通しがよくなるため、日本側からすると新たな提案がしやすく、仕事もスムースになりました。