ユニクロやGUを展開するファーストリテイリング(以下、ファストリ)の2016年8月期決算は、営業利益が前期比22.6%減の1272億円と大きく落ち込んだ。低価格でトレンド対応した商品を扱うGUが好調だった一方、コア事業である国内ユニクロは円安による原価高を価格に反映した戦略が失敗に終わった。

GUや海外事業で取り返せればよいという声もあるが、それは違う。コア事業の成長なくして、グループの業績や株価の改善はない。米ギャップの例を挙げると、低価格帯の「OLD NAVY」が好調でも、コア事業の「GAP」不調により、グループの株価は反転しなかった。

ファストリは16年の経営方針として「すべてを革(か)えよ」を掲げ、すでに構造改革に取り組んでいる。その試金石が、16年に有明に新設した首都圏最大級の多機能型物流センターだ。同施設は徐々に稼働を始めており、将来的には翌日配送も含め、本格的なネット展開が実現する。さらに来春にはマーケティングを担う本部マーチャンダイジング(MD)部門の人員を移管し、トレンド対応可能な24時間稼働体制を構築する。

ユニクロはベーシックな商品を幅広く揃える一方、ファッショントレンドへの対応には苦戦してきた。その部分が有明センターを中心としたサプライチェーンの大改革によって、大きく改善されることになる。これは、GUが独自のファッション路線を歩んで成功したことから、ユニクロが学んだともいえる。

国内ユニクロの業績悪化の要因であった円安は、数年先の為替予約をしている関係で17年8月期も原価上昇が続く見込みだ。だが、売れ筋商品の追加発注体制の強化による値引き削減などで吸収し、私は、同期の事業利益は17%増益すると予想する。18年8月期以降は円安要因による原価上昇も一巡し、構造改革の成果による高い増益率が続く見通しだ。

(撮影=宇佐美利明)
【関連記事】
ユニクロも値下げ! アベノミクスを見限った消費の最前線
なぜマックは急速に業績回復できたのか?
アパレル構造不況!「バーバリー」失った三陽商会の危機
そごう・西武「3店売却」、次なる百貨店再編の台風の目は?
なぜ「ブラック企業」と呼ばれるのか――成長にこだわるユニクロ流働き方