日本人の時間感覚とアフリカ人の違い

ロジ担当の次の仕事は、各国首脳と安倍首相や岸田文雄外相との会談の日程調整。最終的に現地に滞在していた3日間で首相は26カ国の首脳クラスとバイ(個別)会談やグループ会談を行い、外相は10カ国の閣僚クラスと会談した。

しかし、アフリカでは時間の流れ方が日本とは全く違う。私は「短針時計の世界」だとかねがね感じているのだが、日本側が分刻み、秒刻みのスケジュールを作っても、現地の感覚は長針のない時計みたいなもので、1分も1時間も変わらない。

例えば、安倍首相が会談場所に着いて待機しているのに先方の大統領が姿を見せない。連絡してみるとまだホテルを出発しておらず、会談はドタキャンというアクシデントもあった。先方に悪気がないことはわかるから、翌日にもう一度会談をセッティングするのだが、何しろ相手は短針時計。さらに予定はずれる。そんな状態でアフリカ全54カ国のうち、首相外相あわせて36名との会談を実現したのは大変なことだと思う。私が短針時計説を唱えたら、外務省の面々が喜んでくれたから、彼らも相当苦労したのではないか。

短針時計でも成功できた理由としては、アフリカの国々の日本への期待感、信頼感も大きいと思う。日本の支援もかつてはODAが中心だったが、近ごろは企業やNGOの投資と組み合わせたものが増えてきた。

ODAだけの時代は学校を造って終わり、ダムを造って終わりだったのが、企業進出まで含めた広範囲な投資は、雇用の拡大や技術力の向上にもつながり、経済発展の基盤となるのでアフリカ各国も大歓迎だ。日本企業にとっても、成長市場であるアフリカ進出の足掛かりとなる。

日本も明治維新のときに欧米諸国の企業が来て重工業の礎を築いた。1872年、新橋―横浜間で、イギリスの蒸気機関車を明治維新政府が走らせたのが、日本の近代化のはじまりだった。当時の日本にはない分野の企業が来たことで、関連する日本企業が育った歴史があるのだ。

今回の3兆円投資も同じことだ。やがて、アフリカ人自身が経営する企業、産業が育つ可能性が広がる。TICADがアフリカの明治維新となるかもしれない。

(写真=時事通信フォト)
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