創意工夫する「700の現場」

愛知県内で「コメダ珈琲店 日進米野木店」、「日進竹の山店」(いずれも同県日進市)を経営するのが株式会社カプリです。2店舗ともに最寄り駅から徒歩20分以上かかるロードサイド沿いにありますが、こちらも連日多くのお客さんが訪れます。代表取締役の樋口宗彦さんは起業前にホテルのバーやレストランで勤務していたそうです。

「ホテルのバーやレストランは1人当たりの単価は数千円でしたが、景気が悪くなるとお客さんは一気に減りました。でも、それより単価の低いコメダは景気に左右されません。お客さんからも『ステーキ店にはたまにしかいかないけど、コーヒーやパンは毎日食べる』と言われる手堅い商売です」(樋口さん)

同じ日進市内でも2店舗の客層は違うそうです。「日進米野木店は年配のお客さんが多いのですが、日進竹の山店は学生のお客さんが多い。周辺に愛知学院大、名古屋外国語大、名古屋学芸大、愛知淑徳大があるからですが、接客でやることは同じです。コメダの強みは基本の徹底で、たとえばモーニングサービスならパンはできたて、ゆで卵もゆでたてを出すこと。また、一定の節度を持ってお客さんに寄り添うサービスも心がけています」(同)

『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(高井尚之著/プレジデント社刊)

樋口さんは名古屋市内でコメダの別ブランド「甘味喫茶 おかげ庵」も2店経営しており、この店には次回紹介するコメダの看板メニュー「シロノワール」の派生商品「抹茶シロノワール」もあります。

さまざまなカフェに足を運んで感じるのは、人気店では会話が絶えないこと。店の持ち味は「しゃべり場」でもあるからです。

コメダがここまで店舗数を伸ばせたのは、地域事情を知る各FC店オーナーの運営によるものが大きいようです。FC店率がわずか2%のスターバックスは例外的存在ですが、ドトールの同83%と比較してもコメダのFC店率の高さは突出しています。

コメダ社長の臼井興胤さんはこう説明します。

「『本部主導で施策を実現できる直営店が多い方がブランドとしては強い』と思う人もいますが、実際は逆です。中央集権的な本部主導でやる店と、700店の現場が創意工夫で行う店と、どちらが来店客のためになるでしょうか。FC店の集合体がコメダブランドなのです」

外食業界では「繁盛店をつくるのは奇手も妙手もない。店の魅力を打ち出し、新規客を常連客にし続けること」ともいわれます。コメダの強みは、地道な取り組みの徹底。それが飲食店で思い思いに過ごしたい消費者に受け入れられているのでしょう。

高井尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。著書に『カフェと日本人』(講談社)、『「解」は己の中にあり』(同)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)、『なぜ「高くても売れる」のか』(文藝春秋)、『日本カフェ興亡記』(日本経済新聞出版社)、『花王「百年・愚直」のものづくり』(日経ビジネス人文庫)などがある。