3分の2の「改憲勢力」の中身を見極めたい

【塩田】岡田克也前代表は在任中、安倍首相とは立憲主義に対する考え方が基本的に違うので、安倍内閣の下では憲法改正論議に応じないという趣旨の発言を行いました。

【武正】岡田さんのそういう発言は理解しながらも、去年5月に与野党で合意して憲法審査会を進めました。現場では決して安倍内閣では憲法の議論はできないと否定したわけではありません。岡田さんはこれまでの安倍首相の発言が憲法改正に非常に前のめりという点を問題にしたんです。第1次安倍内閣時代の07年、安倍首相の改憲発言で、憲法調査特別委員会は大もめにもめ、7年経ってようやく国民投票法の改正案が成立したという経緯もあります。2度目の政権の13年には、安倍首相は憲法96条を改正して改憲案の発議要件を「総議員の3分の2」から「2分の1」に下げようと言い出しました。これでまた憲法審査会が大揺れになりました。岡田さんの発言の真意は、そういった非常に前のめりの安倍首相に対する警告という側面もあったと思います。

【塩田】数の上では民進党を除く自民党、公明党、日本維新の会、日本のこころを大切にする党の4党の合計議席が衆参で3分の2を超えました。一方、憲法問題では民進党は党内に改憲派と護憲派が同居していると言われています。

【武正】4党が「改憲勢力」と報じられていますが、本当にそうなのかどうか、憲法審査会での議論で見極めたいと思います。公明党からは「私たちは改憲勢力ではない」みたいな話も漏れ伝わってきます。安倍首相は参院選前、「改憲項目を参議院選後に絞り込む」と言っていましたが、自民党は最近、そのことを封印しています。3分の2という議席数の中身をしっかり見極める必要があると思います。

【塩田】憲法をめぐる民進党内の路線の違いは、一つの党として一緒にやっていけなくなるほど深刻で根深いものではないということですか。

【武正】民主党の時代から、05年に党として憲法提言も決め、それを土台に議論してきました。民進党になっても、この憲法提言や、維新の党の憲法に関する考え方などを土台に、と確認しています。党内で丁寧に議論を積み重ねてきた経緯がありますので、それで進めていけばなんら問題ないということです。

【塩田】民進党には旧社会党出身者など、護憲に思い入れを持つ人がいて、一つの党として憲法問題でまとまって行動するときに壁になるのでは、と見る人が少なくありません。

【武正】それは9条の問題が中心だと思うんです。その点は党としての慎重な対応が求められます。安倍首相が行った集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更の閣議決定、その後の安保法案について、白紙撤回を求めていますが、その点ではみんなまとまっています。

【塩田】集団的自衛権問題の反対論は、行使容認不可・安保法制不要という考え方と、解釈変更ではなく、憲法改正で対応すべきだという考え方の二つがあります。民進党は。

【武正】集団的自衛権については党内でも議論があり、日本周辺であれば認めてもいいのではという意見もありましたが、今回は手続き論ですね。立憲主義からいえばあり得ないことで、一内閣が恣意的に憲法解釈を変えた。入り口の議論で認められないということです。安全保障や外交については党内でいつも議論があります。安保環境が激変していますので、その点もしっかりと踏まえる。憲法というよりも、まず法律やさまざま制度で対応できるところがあるので、そういった議論で情報を共有するようにつねに努めています。