失われた秩序を取り戻してくれる

彼らの言葉を聞いて、人々は安心する。トランプは才能があって努力したから成功した。自分はそこそこの才能しかないが、サボったから今の地位で甘んじるのも仕方ない。下を見ると、もっと怠惰な連中がいるではないか。こう納得しつつ、人々は自らが立っている位置、自らの可能性と限界を悟る。冷戦終結以降、失われた陣営の秩序を、ポピュリストは取り戻してくれる。

人にとって、最も不安なのは、自分が序列の下の方にいることではない。序列のどのあたりにいるのかわからないことだ。似た者同士、混沌とした冷戦後の世界で、金持ちが「トップはここだ」と示してくれることによって、自分が真ん中あたりなのか、やや下の方なのかが、見えてくる。

人々は、ゴールが撤去されて途方に暮れた広場で、新たな遊びを見つけたといえる。ルールさえ理解すれば、下手でも参加はできる。エースで四番にはなれないが、九番ライトにもそれなりの役割がある。下を眺めて、補欠よりもましだろうと納得する。

もちろん、ポピュリストが与えてくれるルールや秩序は、多くの場合まがい物である。でも、それは全然、問題ではない。へぼな草野球だって、自分が参加するなら結構楽しいのである。練習のし甲斐もあろうというものだ。

なお、庶民がポピュリストを支持する理由としては、もう一つの説明も可能である。すなわち、ポピュリストは生まれながらの上の住人でなく、下の世界から成り上がった者であり、つまりもともと庶民とは仲間だったからだ、というのである。