手術当日、病院への移動手段は満員電車

手術当日、都心にある病院には、朝9時には行かなければなりませんでした。その日は平日だったため、自宅から病院に向かうとなれば、満員電車に乗らなくてはなりません。わが家にお金があればタクシーを使うか、病院の近くのホテルに妻を泊まらせ、朝はゆったりとした時間を過ごしてから病院へと向かえばいいのですが、差額ベッド代を惜しむような台所事情です。妻に申し訳ないと思いながらも、入院に必要な物を詰めたキャスターを引いて、冬休みの娘も連れて自宅の最寄り駅へと歩いていきました。

少しでもラッシュアワーを避けるため、7時30分前に駅に到着しましたが、そんな私の考えを嘲笑うかのように電車は満員でした。日頃、自宅で仕事をしている私からすれば、乗ることはできないのではないか? と思われるほどの混みようで、朝9時に病院に来るようにいった主治医を恨んだくらいです。

少々疲れながらも、なんとか病院に着いたのですが、手術が行われたのは11時を過ぎてから。これではなんのために満員電車に揺られてきたのかわかりません。病院側に文句をいってやろうかと思いましたが、私に甲斐性があれば、満員電車に乗らなくてすんだのです。すべてはおまえが悪い、と自分に言い聞かせました。

手術が終わってからの要望を妻に聞いてみると、「おいしいお菓子が食べたい」といったため、コンビニでの調達でしたが、妻が好きな物をたくさん買って、手術が終わるのを待ちました。手術後、「手術さえ終わればこっちのもの」とわかるような、わからないようなことを妻はいい、子どものように目を輝かせ、これらの物を食べていました。その様子を見ていると、コンビニなんかで調達するんじゃなかった、と思い、なんだか妻が痛々しくも見えました。