「新規性」以外の店の価値って?
先日発売されたグルメ雑誌「dancyu」は、特集テーマの1つとして、さまざまな居酒屋の「系譜」を紹介していました。今や大繁盛している店であっても、もともと店主はどこか別の店で修行をして、下積み生活を送っていたことがほとんどです。私が所属する組織は、グループで和食を中心に飲食店を経営しているのですが、今回の特集においてそうした系譜の大元として紹介されました(代表店舗「並木橋なかむら」にちなんで、「なかむらの系譜」として卒業生の店がいくつか取り上げられています)。
なかむらグループの代表はその記事を見て非常に喜びました。というのも、系譜ができるということは、それだけ長く店を続けている証であり、そうした価値をメディアが取り上げてくれたからです。メディアが飲食店を取り上げる際には、「新規オープン」や「海外ブランドの日本初出店」など、「新しさ」が前面に出ていることがほとんどなのです。
もちろん、新しさに光を当てるのは、そちらのほうに情報価値があるとメディアが判断している(少なくともそう思い込んでいる)からに違いありません。老舗であってもたびたび取材をされる店はありますから、「新しい店ばかりに注目しやがって」とうらやむのは、自店の魅力の乏しさを棚あげしていることになってしまいます。それでも、長く続けている店舗の経営者にはそうしたほろ苦い思いを抱いている人は少なくありません(ひょっとすると若さへの嫉妬みたいなものでしょうか)。