自分と向き合う余白が物語を生む

やっぱり、人間に余白は大切です。

多忙な人に休養が必要なように、予定にやたら盲従せずに、立ち止まって自分を見つめる時間を1日のどこかで持ってほしい。

それと、自分の考えや感じたことを文章化すると、それまでもやもやと逡巡していた自分の思考がはっきりしてくることがあるでしょう。

手書きのよさというのもあります。ペンを持って書いたものは、手指を動かして残った体の運動の軌跡です。墨書に書家の心が表れるように、手書きの記述にその人の人柄や物語が浮き出してくるんだと思います。

僕の父が他界して、遺品を整理していたときのことですが、父の手帳に「巨人4対3で勝ち」と書かれているのを見つけたんです。びっくりしました。僕の知る父はアンチ巨人で、子供の頃に僕が巨人を応援していると「あんなものは」と難癖をつけるのが常でした。ところが、手帳にはそう書いてあったんです。

父は、本当は巨人ファンだったのか。じゃあ、なぜアンチ巨人を装っていたのか。逆にアンチ巨人ならば、なぜ巨人の勝ち試合の記録を残したのか。そこに、僕には計り知れない、当人だけの物語があるんですよね。

家族にも見せていない父の顔があって、手帳に向かう時間は、父がその自分の顔と向き合う特別なものだったのかもしれません。

本当の自分を見つめるため、あるいは自分を振り返ってみるための余白。スタッフたちと、ああでもないこうでもないと言いながらほぼ日手帳で提供しているのは、そういう余白なんです。

1日1ページで、書き込むスペースはたっぷりあります。「な~んにも決まりはありません。どうぞ、思いっきり好き勝手に使ってください」と。それがつくり手の僕らが望む、ほぼ日手帳の楽しみ方。柔らかく豊かな思考の遊びを促す、時間の余白でもあると思います。

▼みんなは、こんなふうに使っています
[1]これは盲点?「カズン」を日々の英語学習用ノートに。コピーを切り貼り。
[2]ページを撮影してインスタグラムなどSNSに投稿・共有する人、多数。
[3]糸井事務所社員の使用例。時間軸と方眼を駆使して、1ページ1日分を広々と活用する。
[4]1ページ2日の箇所に、気に入った格言やエピソードを並べて書き込む。
[5]時間軸の活用は申し訳程度。各ページを趣味の菓子作りで埋め尽くす。
[6]1ページ2カ月分の年間インデックスを、主ページの目次として活用する。

(高橋盛男=構成 小原孝博、ERIC=撮影 写真出典:『ほぼ日手帳公式ガイドブック2016』、「ほぼ日刊イトイ新聞」HP)
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