「価格の進化」経営を推進する7つのポイント

時代を超えて求められる企業になるには、
(1)市場
(2)顧客
(3)意味(用途・役割)
(4)製品(商品)
(5)価格
(6)ブランド
(7)サービス
(8)課金方法
(9)販路
(10)販売方法
(11)コミュニケーション
という11の領域で経営を進化させ、経営全体を最適化することが必要だ。

詳しい進化経営のプロセスは、既に上梓した『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会刊)に譲るが、今回は(5)価格の進化に取り組んだメーカーズシャツ鎌倉の事例から、製造直販方式による価格設定の工夫から、全体最適を図って進化していったポイントを7つ抽出する。

(1)流行や季節性に影響を受けにくい製品領域に絞り込む

ビジネスパーソンがスーツに合わせて着るドレスシャツは毎日着る消耗品で、定期的に買い換え需要が起こる。高額なシャツには手が出ないが、紳士服の量販店やスーパーでは買いたくないというこだわりを持つ男性は多い。こうしたビジネスパーソンがメーカーズシャツ鎌倉の商品を評価してファンになり、リピーターが生まれた。

シャツのカテゴリーは季節に影響を受けにくい長袖が基本で、またデザインも流行に左右されにくい。こうした定番商品的要素が強いシャツのカテゴリーに絞り込んだことが同社の強みになった。アパレル産業に限らず、コモディティ(価格の安さだけで選ばれる製品)にならない消耗品市場で、季節性に左右されず定番的な製品カテゴリーを見つければ、大きな鉱脈になる。

(2)中間流通をなくして製造直販に取り組む

ファッション衣料の販売価格が高くなる理由は、中間流通に支払うマージンと売れ残りのリスクを加味した価格設定になっているためだ。この点にメーカーズシャツ鎌倉は着目し、シャツの専門店業態に製造直販方式を導入した。

(3)知覚価値価格設定とバリュー価格設定を組み合わせて市場規模を大きくし、高収益性を実現する

製造直販にすれば価格の設定は自由に行え、しかも利益は増える。しかし海外ブランドのように高額な価格設定にすると、顧客の数は減り、市場規模は限られてしまう。そこでメーカーズシャツ鎌倉はデパートよりも手軽で、量販店やスーパーで販売されている新興国製商品ほど安価でない、国内生産で4900円(税別)という価格に設定した。

この価格は、ここまでなら支払ってもいいと思う顧客の心理・値ごろ感・支払い能力を踏まえた知覚価値価格設定と、コスト・パフォーマンス(費用対効果)が高いバリュー価格設定を組み合わせている。目の肥えたこだわり層なら、品質がいいのに納得価格になっていることが見抜ける。また手が届く価格を実現したことで、顧客層を広げ、市場を大きくすることにも成功している。